紋谷のソコヂカラ

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現実と現実の間にある1本の坂道[紋谷のソコヂカラ]

投稿日時:2008/08/26(火) 04:16

がんセンターからバス通りを一本挟んで、
真向かいには、神奈川県民はみんなご存知、「運転免許試験場」があります。
おかげでこの二俣川駅から歩いて20分の坂道は、1日中、人の波が絶えません。
道の先は住宅街ですから、この道を登って来る人達の目的は、“自動車免許”か“癌センター”そのいずれかです。

天気のよい日など、通りに面した石垣に腰を下ろし、行き交う人達を眺めたりしています。
試験場側の歩道は、カラフルで元気…若くてノー天気な一団が闊歩しています。

対して病院側は、じいさん婆さんが中心。
人生の終わりを、もしくは終わり方を、
どこか意識した方々とそのご家族達です。
かたや高校を卒業し、
社会人としての初舞台に上がろうという精気に満ち、
かたや…人生の大半を終え、
幸せってなんだったんだろうなどと振り返っている人達。
この対比は、分かりやすく現実的です。
意識して見なくとも、伝わってくるオーラの違いは明らかです。
1本の通りを挟んで右と左、それしか違わないのに…
たぶんこんな光景は、他では見ることが出来ないと思います。

たまに試験場の敷地に入ったりします。
今日(0821)もなんとなく…
入り口の脇のベンチに腰を掛けこのブログを書いています。

「???ええっ!!!なんだよぉ~そっちのポケットにあったぁ!?
なんだよお~。おいおい!まいっちまぅなぁ~。
昨日、あれだけ探したんだぜぇ~いま免許証再交付してもらっちまったよお。
そうだよぉ~…なんだよぉ…そうかぁ~俺のポケット2つあるからなぁ~
そっちかぁ~まじかぁ!? 
~以下省略」

◆20代後半ぐらい男性。スーツ姿…営業?
●すごい悔しがっている感じが伝わってきました。
人生、損したぁって瞬間ですよね。
分かります。
いけないのは、あなたじゃないです。
ポケットです。2つあるほうがいけないっすよね。


「まじウケルんだけどぉ~献血したらさぁ~
あのさぁA型だったんだよぉ~そうまじ!
ウチさぁ36年間O型だと思ってたのにさぁ~
まじビビったぁ~A型かよぉ…って感じ。
36年間生きてきてさぁ~ずっとO型だとさぁ…  
~以下省略」

◆年齢36歳 女性…若く見える?
●…思わず顔見ちゃいました。
ごめんなさい。免許更新に来て、献血してよかったですね。
…初めて献血したんですね。…ずうっと独身なんですね。
…次からの合コンでは、ワタシぃA型だからぁ几帳面って言われるかもぉ…
これでゲットです。

ベンチに座って、ものの10分くらい…
作り話しじゃないですよ。本当に目の前での話し。
笑わせてくれます自動車免許試験場。

病室にしばらくすると…主治医にナースセンターに呼ばれた。
採血データを手にした先生が…
「もんやさん。1回目と同様に、2回目の投薬でも、
数値が著しく改善してはいないですね。
もっと効いていれば…こうね…ポオンって下がるんだけどね…
うーんなんとも言えないけどね。
やはり完治は難しいと言わざる負えない。
前の大学病院の僕の患者さんで、
8回ね、このNI治療を繰り返している人がいるんだけど、
腫瘍マーカーが上がったら薬入れて…
また、数値が鎮静化したら止めて…その繰り返し。
でもね、8回も入れるとね…骨髄に障害が出る。
…そうなると…治療は続けられない。
悪くすれば白血病を発症することにもなる。
…そのせいで、その方も治療をストップしている。
そして治療をストップするということは…。

選択肢としては、このタイミングで、
完治の治療は断念して、緩和ケアーに切り替えるということもあります。
そして最後が、少しでも病気の進行を遅らせるという選択。
ここにおいては、最善のパターンは不明ですが…」

◆50代半ば位 職業:医師 風貌…小説家風
●結局、結論はなんなのか?
無理やり薬を入れ続けるのか。死を受け入れ、残りの人生を謳歌するのか?
…はたまた、ポオンとは落ちないけど、今の薬は、癌に対して、
歯止めにはなっている。
病気と付き合う方向で、治療を続けましょうなのか…?
患者は困っています。でも、決めるのは自分。
あくまでも選択肢を提示して頂いたのですね。
すんなり完治しないでごめんなさい。
いい難い話をしていただきありがとうございます。
僕の今の答えは決まっています。
その答えが正しいのかは分かりませんがね。

最近、入院される方が増えた気がします。
病室に戻ると、今日もまたひとり同室に。

「もう20回目だよ。○○先生ん時からだよぅ。
そうだよ。おうっ。えっ?食事?…飯か?…いらねえよ。
おらぁよぉ…ちゃんと焦げ目がついてなくちゃ魚喰わねえんだよ。
サンマもよ、シャケもよ…生っちろいんだよここのはよ。
あれじゃ食えねぇ。だいたい飯が美味くなくちゃ元気になれないだろ。
ダメだよぉ~ありゃあ。」

◆年齢70歳オーバーな感じ男性職業不明
●かなり声がでかいことを除けば、至極ごもっとも。
生焼けではなく、大量に業務用オーブンで焼いているのでしょうが…
やっぱり焼き魚は焦げ目っすよね親分。
しかし“おつとめ”20回っすか…おみそれしやした。
投薬が8回だなんだかんだで、ぐだぐだと…自分…恥ずかしいっす。

こちらも、病室に戻り、ものの10分くらいの話し。
笑える出来事はなかなか起こりませんが、
通りの反対側…こっちもこっちで色々あります。


採血なるもの[紋谷のソコヂカラ]

投稿日時:2008/08/15(金) 00:37


今日は採血、という朝は、少しドキドキする。
血液というのは、誠に正直で、しかも雄弁…
今の自分を真っ裸にしてくれる。
腫瘍マーカー値はもちろん、いくら元気を装っていても 、赤や白だの血球量が、今の自分の“そのママ”を映し出す。
余計なことに、腎臓や肝臓などがちゃんと機能しているかなんかも、バレてしまう。
癌で入院してるのに、お酒飲み過ぎですねぇ~なんてことも言われたりする…

大きなお世話です。



隠し事はしない質なんでね…などと言っていても、
そうありたいというだけで、恥ずかしいことなどは、自ら口にしないだけ。
昔から格好つけて生きていた僕などは、
この真っ裸にされる感じが、とても落ち着かない。
陳腐に例えると、あのテストの答案を返される感じ。
見たいけど見たくない…ああっ~恥ずかしい。
「先生だけは、この52点という点数を知っている」

採血次第では、天国と地獄。マーカーの数値は人生を左右し、
白血球の数値は、週末に外泊できるか否かを決定する。

先日の話。
僕と僕と同室の男性が採血結果を待っていた。
普通の病院に外来で通っているのであれば、
一般的なデーターの検査でも2~3日は待たされる。
しかしここがんセンターでは,早ければ1時間半で検査結果は出てしまう。

採血を8時に終えれば、10時にはデーターは出ている。
ただし、あくまで採血の結果が出たというだけ。
ここに“医師の判断”がなければ数字は意味を持たない。
外来を忙しくこなし、医者が患者さんごとに“判断”を伝えに
病棟に上がってくるのは、1時を回る。
その日は、特に外来が混んでいるらしく、
3時を過ぎても医者は姿を見せなかった。

同室の男性の所には、午前中早い時間から、
奥さんと小学校にあがったくらいの娘さんが、顔を出していた。

「パパ痛 くないの?」
「痛くないよ」
「ふぅん…ねぇ早く帰ろうよぉ」
「もうちょっとだから待っててね」

「あなた…今夜は何食べたい?」
「(笑)…そうだなぁ…何でもいいよ」

絵に描いたような…とはこういうことだ。
普段は当たり前過ぎて意識していない幸せは、
こういう時に改めて感じるのだろう。

「ごめんなさいね、先生、外来が忙しくて…もう少しお待ちくださいね」
「はい」
「体調はいかがですか?」
「調子いいですよ」
「採血結果よければ…外泊ですよね」

「明日ね。花火行くのぉ~ねぇ~」
「あらぁ~いいわねぇ~」

病院という場所では、パパさんの威厳も優しさも、
着古したパジャマのように色褪せている。
自宅に帰れば、ほんとうの自分に戻れるのだ。自然と笑顔も出てしまう。

ママさんもうれしい。
自分が、うれしいのはもちろん、
“あなた”がうれしそうなのが…とってもうれしい。

パパとママがうれしそうだから、“ワタシ”もうれしい。
早く帰ろ…オウチに帰ろ。


ほどなくして先生がやってきた。

「◯◯さん…今からお部屋移ってもらいます」
「え!?…」
「残念だけど…白血球が400しかない」
「………?………」
「お見舞いも当分は無理かな」
「…………」
「奥さんは仕方ないけど、お子さんは…」
「………………」

「◯◯さんすいません。ベットごと動かしますから、すぐ準備してもらえますか」
「…………」

「……荷物片付けないとね…ほらベットから降りて…」
「パパぁ~どうしたのぉ?」
「……………」

遅れること5分
体育会系元気印の看護師2年生…大きな声で…

「もんやさぁん…採血結果出ましたぁ。先生、外泊OKですって!!」

僕は、彼女を睨みつけた。
「……?…」
手招きをして、ベットの脇に呼ぶ。人差し指を唇の前に。

「あっ!?…」

無言で首を振る。


今日も採血の日。
まったく 血を抜きすぎだ。貧血になっちまう。

朝の採血は中条さん。
そのフレンドリイさが、患者とその家族にも評判のホスピタリテイの高い看護師さんだ。
夏休みはカナダにロッキー山脈を見に行くらしい。
ストレスの溜まる仕事、楽しんできてください。

そろそろお昼。


愛する女房の手料理も、可愛い子供との花火も、
ロッキーマウンテンの雄大な眺望も、
僕には、まったく縁がないが、
また今日も、少しドキドキとしながら採血結果を待っている。


30日に2回目の投薬。[紋谷のソコヂカラ]

投稿日時:2008/08/04(月) 20:26

物事が、それなりにこともなく進んでいたり、
よい結果などが出ているうちは、よいのです。
いったん トラブルが起こったり、望んだ結果が得られないと分かると…人の本性は姿を現します。

また、良いときに“よい感じ”なのは当たり前で、悪い時に同じように“よい感じ”でいられるか。しんどい時の“在りよう”で、彼の器の大きさや、彼女の肝っ玉の座り具合は分かってしまいます。

30日に2回目の投薬。
1回目の結果を受けて…今回は許容量MAXの投与となる。実質120%UPだ。副作用もその分UPだ。

僕は決めていた
点滴中、いちばんキツク感じる瞬間に
主治医の先生と担当の看護師さん相手に
冗談のひとつもカマシテやろうと。

どんなにしんどくとも、ジョークを口ずさみ、余裕のあるところ見せてやろうと。

「おぅ…Mrもんやは、なんてすごい人なんだ。こんなにしんどいのに…ユーモアを忘れない。
本物の男だ」 と思って頂こうと。

30日当日 朝1000から1本目。まずは「吐き気止め」。
このネーミングがたまらなく嫌いだ。
なんとかならないか…といつも考えるが思いつかない。

この日は、午前中お見舞い客があった。彼らの会社や仕事の話しなどして盛りあがる。
「なぁんだ…元気そうじゃないですかぁ」と言われ
 “007シリース製作40周年記念19タイトルDVDセッドを頂いた。
そういえば「FROM RUSSIA WITH LOVE 」のダニエラ・ビアンキが、
“スクリーンに恋した“初めての女優さんだったなぁ。などと思う。

1200。彼らが帰るとほどなく点滴交換…2本目にしていよいよメインイベンターの登場だ。
ネダプラチン …ネダ・プラ・チン! 。

…僕の元気は ここまでで終わった。

思い出したくもない時間のはじまり。

まずは 全身の皮膚が逆立つ感じの悪寒 これが前兆…次に 吐き気 …胃の中を駆け巡り…
ひっきりなしに突き上げてくる …鼻水が止まらなくなり 体全体から汗が噴き出してくる感じ。
胃がぐうっと縮まり、点滴を引きずりトイレに駆け込む。

特に吐き気はひどい。
一瞬たりとも収まらず、寝転がることすら出来ない。
そのうち体全体が痙攣をはじめる。
それでも吐き気は収まらない。

「こんなもの体に入れるな!!」 …僕が怒っている。
ネダプラ野郎は3時間をかけて、ゆっくり入れる。
まだまだ 続く…ひとこと…失神したい。

1500。次の抗がん剤は、イリノテカン …弱そうな怪獣のような名前だ。
しかし…手強い。さっきまでの症状に加え、左の上下の歯がギリギリと痛みはじめ、
右目がモノモライのような鈍痛で開けられない。

1700。いれたばかりの抗がん剤を、体に行き届かせる為の点滴、通称「流し」に替わる。
これが2本4時間。この流しがまたキツい。
いったん受け止め切った薬が、このせいでまた体中を巡るため…気持ち悪さが増大する。

このあたりまでくると。
ただぐったりしている状態となる。
動けない。動きたくない。

トイレの消毒剤の臭い。
病院食の臭い。
病院の臭い全部が気持ち悪い。

廊下を行くストレッチャーの音。そこかしこで聴こえるお見舞の声。
病院の音全部が気持ち悪い。

それでも、自分で決めた約束事は忘れていない。
いや正直、忘れてはいないが…どうでもよかった。
というか、それどころではない。
そんな気分であるわけがないじゃないか。
ここでジョ-クなど口にしてなんになる。

……しかし、逃げるのは簡単だ。
意味ない、と誤魔化し、なかったことにしても誰にもわからない。

それでよいのか。
いや違う。しんどい時ほど自分を試せ!だ。

先ずは様子を診にきた看護師“君”で肩慣らし。

「吐き気抑えるクスリある?」
「ドンペリドンでよいですか?」
「…銀座のホステスじゃないんだから…どうせならクリュグにして…美味しいから」
「…??」
「あっいや…ごめんシャンパンみたいな名前だなぁと思ってさ」
「……はぁ」

駄目だ 完璧にダメだ。
ジョークがハイブリット過ぎた。
気持ち悪さが増したかのようだ。

夕方、外来を終えて回診に来られた主治医の先生。いよいよ本番だ。

「だいぶんキツイようですが如何ですか?」
「ハァハァ…」
「つらいですか?」

「先生!これはやはり人の体に入れるもんじゃないですよ」
「…無言…」

いちおうインテリ系のユーモアのつもりだったが、僕の悲惨な状態のせいでは、
マジに受け取られてしまったようだ。
治療を否定していると思われてはいけないので、
すかさず自覚している症状の報告へと言葉を繋いだ。
ふむふむと頷く先生

帰り際 、最後の挑戦

「今回は、前回を踏まえて量を増やしてますからね。
やはりその分副作用もキツイわけですよ…」

「先生、だいじょうぶ。抗がん剤は…“こうでなくっちゃ”…ですよ」
精一杯強がった魂のジョーク。しかも哀しそうな笑顔を添えて。

「ははは…そうですかぁ
効いてる感じがしますかぁ(笑)」
よかった 少しは喜んでもらえたようだ。
…しかし充実感はない。なんか虚しい。…ただ、変わらず気持ちが悪いだけだ。

男の器の大きさとはなんなんだろう。

しょこたん先生[紋谷のソコヂカラ]

投稿日時:2008/07/29(火) 09:06

しょこたん先生はいつも、音もなく現れる。

気づくとベットの脇に立っていて、「おかわりないですか?」とくる。

「ありませんよ」と応えると、「そうですか」と応え…そのまま佇んでいる。
…特に何かを語るでもなさそうで…口元にわずかに笑みをたたえ、じっとこちらを見ている。

そのまま無言で向かい合うのもなんなので、
「2回目の投薬、量を増やされるんでしょ…怖いですね」
などと振ってみると、

「…そうですね…今回の結果を受けて決めますから…」
とひとこと。
「はいわかりました」…
「ではまた」

僕のケース、医者の側から見てみると、ひとつ、新しい抗がん剤が効くのか否か、ふたつ、副作用の程度に問題はないか否か、後者は前者のためにチェックされる。つまり“決められた量を決められたサイクルで投薬する”ことが重要な抗がん剤治療の場合、副作用の程度によっては治療を断念したり、サイクルを変えなければならなくなってしまうからだ。
逆に言えば、いったん投薬をしてしまい、その後副作用に問題なければ、次の投薬までそれほどナーバスになることもない。

僕も、勝負は“効くのか効かないのか”の一点、ここに気持ちの全部を持ってゆく。それ以前の副作用がどんなに酷くとも、通過儀礼でしかないと頭と体で感じている。
だから、グチのひとつ、悩みのひとつ、言うわけでなし。しょこたん先生が、様子を伺いにいらしても、患者らしからぬ態度に映っているのかもしれない。

こんな鈍感でふてぶてしい僕は別にして、癌と宣告され、化学療法を受けている多くの患者さんにとって、治療と治療の間は心が揺れる。開き直っていたつもりでも…怖い…強くありたいと願っても…不安は襲う。
だから、病室に回診に来てくれた折の先生の言葉は、魔法のコトバだ。
決して「だいじょうぶですよ」とは言わない、よいところ「がんばりましょう」だ。それでも先生のひとことひとことに患者は救われる、毎日お見舞いに来てくれる奥さんに甘え倒し、わがまま言い放題のオヤジさんも、先生に対しては神妙な顔で、その魔法のひとことを聞き漏らすまいと、ベットの上で正座する。
お医者さんも大変だ。明らかに気持ちが落ちている患者さんなどに、
「だいじょうぶですよ」と声をかけてあげたい。でもそれは出来ないこと。
その代わり、患者さんが感じる悩みや体調の変化ひとつひとつに耳を傾け、丁寧に応えてゆく。

しょこたん先生はそんな先生だ。

何度か見聞きして気づいたことですが、彼女は、患者さんのどんな質問にも、正確にそして誠実に応えようとしている
感情を露わにせず、余計な気づかいもせず…ただプロとして相対している。
しょこたん先生は、大学病院での、前期研修医期間を経て、この病院にやってきた。泌尿器科はご本人の希望。なぜと伺うと…少し考え“手術があるから”…と答えた。
患者を治す行為に“手術”という直接的なスキルで対処できることが魅力だったらしい。

「充実感はありますか?」
「まだまだ追われていて…そこまでの余裕はないですね」
「患者さんがみんな癌ということに抵抗はありますか?」
「いえ…特に…」
「その誠実さは昔から?」
「う~んどうでしょう」
「趣味はなんですか?」
「…ギター」
「ロックですか?」
「軽音です」
「コピー?」
「友達はジュディマリとか」
「先生は?」
「…スピッツ」
「今も弾くんですか?」
「いえ…時間もないし」

先生、申し送り前の貴重なお時間をすいません。これからもそんな調子で…お願いします。

ちなみにこのプチ取材はこんな質問から始まった。
「先生…しょこたんに似てるっていわれませんか?」
「…えっ!?……そんな!……‥言われたことは…あります」

※ブログへの掲載は、一応、ご本人の快諾を得ていますが、実際にご覧になり、気分を害されるかもしれません(笑)。その場合は速やかに削除致しますのであしからず。また、お見舞いにいらした際、しょこたん先生をお見かけしても、「しょこたん先生!」などと気軽に声をかけないようにお願いします。僕の大切な主治医のおひとりですから

もんやが亡くなったらしい。お葬式は身内だけで“密葬”したとさ…」[紋谷のソコヂカラ]

  投稿日時:2008/06/30(月) 21:48

「もんやが亡くなったらしい。
お葬式は身内だけで“密葬”したとさ…」

こんな噂が流れていると…聞かされた。
可笑しい。

この“身内だけで”というのが微妙に当たり障りのないリアルさを
醸している。しかし“密葬”は頂けない。

僕のような一般人にはそぐわないし、それでも使うとなると…僕の死は、家族が公にしたくない “いわく付き” ということになる。これは困る。

噂の主に悪気はなく、恐らくは、身内だけ=密葬と単純に
想起し、単に付け足してしまったのだろうが。
この珍妙な噂は、その後何人かの友人達から別々にもたらされた。
デマというのは尾ひれがつくと言うが、僕の死に、それほど価値はないのか、付ける尾ひれがないのか、相変わらず“身内で密葬”としか形容されていなかったらしい。

昨年のお盆前に癌の再発を告知され、
2種類の抗がん剤投与を併せて9クール、
延べ7ヶ月間の治療を終えて退院したのが3月の末。

癌自体を抑え込むのに費やした投薬は
体のあちこちを副作用という名で“破壊”してくれる。
骨髄抑制が引き起こす白赤血球や血小板減少、
また嘔吐・食欲不振・脱毛のような短期的な症状は、
投薬後時間の経過と共に改善するのだが、
腎機能不全や末梢神経障害などは簡単には治らない。
とはいえ、その症状の程度は“人による”…世の中、
大抵のことは“人による”のだ。

僕の場合は、末梢神経障害。退院後3ヶ月経った今でも、
足は膝から爪先きまで、手のひら全部が完全に痺れている。
退院後、一刻も早い社会復帰を実現するためには、
とにもかくにもこの痺れを取り払わないことには…と
治療に明け暮れた。

しかし神経内科の医師には
「筋電図の検査ではあなたの足の運動神経は70歳レベルですね」
と評され、さしたる治療法も提示されず、
「神経はビタミンB12とヨウサンが造るのです」と
2種類の錠剤を渡された。

「先生!この赤い方…メチコバールですよね。
これはがんセンターでも飲んでましたが、体が痒くなるだけで…」
と訴えると、気分を害したのか
「そんな簡単に治るわけないじゃないですか…飲み続けないと!」と切れ気味に。
負けじと「普段の生活で僕が出来ることはありますか?」と聞くと、
薄笑いを浮かべ「まぁ動かさないよりは動かした方が…」と。
これはダメだと、以来通っていない。

西洋が駄目なら東洋だと友人に勧められた針灸の女先生の元にも伺った。
「もんやさんの体は例えると“火事場のさつまいも”スカスカ状態だねぇ。
しかも強い薬を入れすぎて体が外部からの侵入を拒否しているのよ。針がね…入らないわ。」
それでも丁寧に何度も何度も少しずつトライをして頂き、
2回目の訪問では、かろうじて有効な針が打てるようになったと言われた。
簡単には治らないことは覚悟し、自分専用の針を買い、とにかく通おうと決意した。

そんな矢先でした。
主治医より“再々発”の連絡が入った。

そして1ヶ月後 今、僕はまた病院のベッドにいます。
可笑しくも珍妙なる噂のもとは分かりませんが、
そんな噂が流れた理由のひとつは思い当たると友人に言われた、
「ブログを更新しないから…」

ということで、再開することになりました。

再開に当たっては、この サイトの管理者であり、
よき友人でもあるM氏と約束をしています。
それは単なる「闘病日記」にはしないこと。
出来るなら、エンタテイメントなど広い分野に対して
“もんやチックな”視点を披露すること。

僕自身も、病気に関する話ばかり書いていても楽しくはなく、
その約束は嬉しい限りなのですが…かといって、
僕を心配して覗いてくれた方に、あまりに脳天気な
“もんやチック”であってもいけない。
悩ましいところです。

そのあたり、適当なところで折り合いをつけ、
副作用に立ち向かいつつ、痺れに負けず、正直に感じたままを
綴ってていこうと思いますので、
時に思い出し覗いて頂ければ 嬉しいです。
 
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