紋谷のソコヂカラ

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年の頭に 年末の噺[紋谷のソコヂカラ]

投稿日時:2011/01/06(木) 18:12

知り合いにしっちゅう風邪をひいている男がいる。

久しぶりに話すと
「いやあ~風邪ひいちゃって」と
いつも言っている。

「いやあ 下の子が 小学校でもらってきて
    …上の子にうつって そのうちにかみさんも熱出しちゃって、
   それで、みんな治ったと思ったら 今度は ボクが… 
   39℃あるんですよ まいったなぁ」

いつも このパターン 

「小学生の風邪って キミはどこまで免疫力ないんだい?
 だいたい40歳過ぎたら高熱なんてあんまり出るもんじゃないよ。
   どこまで、虚弱なの?」

何度、こう言ったことか…

そもそも風邪なんて 暇なやつか 
気が緩んでいるやつが かかるもんで、
日々、忙しく緊張感のある人間には
寄ってこないものだ

かかりそうだの気配がしたら 

寝る 

市販の薬は飲まない 

風邪っぽくても風邪なんだと思わない 

思ったら負け 

古典的だが病は気からである。 

熱がある感じがするのは気がせい 
体温計は持たない 
熱があがったこと確認しても意味ないから…

ああ~やっぱり 9度もあるぅ~ 熱があるぅ~ 

そんなんで自分を追い込まない 
超熱燗飲む 熱い風呂に入るやいなや
布団をぐるぐる巻きにして 
頭に凍ったタオル 

寝る 
ひたすら寝る

~ ほら やっぱり もうだいじょうぶ 気のせいだった 
…こうやって乗り越えてきた

それは 風邪ひいてんじゃん!? 
…いやいや ちょっと弱っていただけ 
…風邪じゃない

風邪引いた …って 
自らそう言うのがもう逃げてる 
なんだか人生の免罪符みたいで潔くない


…… !! ……


12月24日 
世の中が浮かれている夜に調子が悪くなった

まず食欲がない このボクが食欲がない 

…? これはおかしい

頭ががんがんしてきた 咳がとまらない 
「恋と咳は止まらない」と言うが、
ぜんぜん止まらない

熱は…体温計がないのでわからない…が
額でお茶が湧きそうな感じ

いちばんひどいのは 体の節々が“攣る(つる)”のです 
脇腹 肩 旨 手足 
もうところかまわず 激痛とともに攣りまくる

これは なんだ?? 

とにかく 超熱燗 ~ 熱い風呂コースと思うのだが、 
体がお酒を受け付けない
風呂もなんだか 無謀にしか思えない

そのまま 布団にくるまり 
嵐の治まるのを待つしかない 
2日そのまま 
なにも食べずひたすら 寝ていた。

…それでも いっこうに回復の兆しがないので、
ネットで近所の内科を調べて ゲンチャリで向かう

「インフルエンザですね はいA型 だね。
 A型は辛いよね。 体温計は持っていた方がいいよ。
 熱の上がり下がりは重要で、それで、病気がわかるからね。
 …いまはよいクスリがあるから大丈夫。
 それと抗生物質と咳止め 胃の粘膜も保護しときましょ
 はい 5日分 …帰りは向こうの出口からね
 待合室の患者さんにうつしちゃいけないからね。
 …処方箋持って ここの薬局にね 
 …電話入れておくから そこでも外に持ってきてもらってね
 人と接しちゃだめだよ 今日から4,5日は保菌者だからね
 はい お大事に」


訂正:「風邪はかかる時はかかる 気の緩みも 忙しさも 関係ない
    そいつは突然やってくる 気合いでは直せない 
    人生の免罪符なんてとんでもない 逃げているなんて 
    まったくの誤解でした ここに訂正してお詫びします 
    体温計 もちろん これから常備します はい。」

◆◆◆

インフル襲来の5日前

下町に住む友人夫婦が 
クリスマスのイベントを行うと言うので 
顔を出してきました

もともと工場(倉庫?)を改築して 
イベントスペースをしつらえ、
そこでいろいろ発信しようとしているご夫婦

もとから知り合いの旦那さんは デザイナー 
奥さまは ヨガも教え モダンダンスもご達者
そこに、フルート奏者とアコギのユニットを加えた創作舞台

1部は 聞きなれたクリスマスソングを 
フルートとアコギで奏でてゆく 静かな時間



小さい舞台は 淡い間接照明と 
蝋燭(廃油で作ったオリジナル)の灯り 
観客は30名みんな床に体育座り 

途中休憩をはさみ2部は 
クリスマスにちなんだ朗読や 
修道女に扮した奥さんの踊り 

そして、メインは 
世界の民族音楽やフルート奏者のオリジナル曲に合わせ 
一面の白い壁に 友人が即興でイラストを書いてゆく 
世界のさまざまな国の人がクリスマスを楽しんでいるイラスト 

ご夫婦は この下町のみなさんも巻き込んで 
地域を活性してゆきたい思いもあり始めているイベント
…ゆえに 観客には ご近所さんも多い

1時間と少し 楽しめました 
終わって 飲んでいると 
自然に こうしたらよいとか 
こんどはああしたいとか
…そういう時間も含めて
とても楽しかった 

感じたのは 

「こういう舞台と与えられたら
 じぶんなら なにを発信する
 …発信できるのか
 …したいのか」ということ

同じく観ていた 後輩に問うと、

「わたしは …とくに ないんですよね
 世間に言いたいこと うーん なんだか 
 毎日 仕事していればそれでいいっていうか
 …改めてなにかを表現したい…って 
 とくに ない」

まことに正直な感想で 笑えた 

翻って自分は どうなのか

押しつけでなく 説教くさくなく 
楽しんでもらえるもの… 
自己満足からでもよいから

同じく 観ていた友人は

「もんやさんは 説教がいいんじゃないんですか
 みんなに説教する そういうの」

説教か …やっぱり(笑) 

BACK はゴスペルですね そうなると


◆◆◆

インフル襲来の直前23日

「立川談志の 近年の傑作と言われた
 2つの噺を 映像での上映会 」

2つの噺というのは 

「文七元結」と「芝浜」

実はこの日 
夜の部では実際に談志が 
芝浜を生で聴かせるライブショーがあって 
そちらは当然 完売

完売だからの言い訳でもなく、
また 落語はナマで…が当たり前
ということも承知の助なのですが、

僕はあえて、このふたつの噺が 
いかに素晴らしかったのかを味わいたかった。

たとえば「芝浜」は2007
おなじよみうりホールで演じた 
ご本人が「神が降りた」と評した伝説の独演

こういうモノは、
同じ芝浜だから よいのではなく 
たとえご本人が生で
目の前でいま噺して聴かせてくれたとしても
それは、あくまで今の「芝浜」でしかなくて、
 
同じ噺だから なんでもよい
というものではないところがよいのです。

落語家には 

「笑える落語家」と
「聞かせる落語家」がいて 

いまでしたら、前者は 
柳家小三治 春風亭昇太 あたりであるのに対して、
後者は 圧倒的に立川一門であります。

志の輔や談春などは 笑いももちろん “取りにくる” のですが、
頭から笑いを取りにくるのではなく、

「笑わせようとすれば、できちゃうんだけど、
 ここは泣かせるね」って
達人の余裕があるのです。

だから、ゲラゲラ とにかく笑いたい派は 
そういう噺家さんを 

人情噺の深みにはまりたい方は 
そういう噺家さんを選んで聴かれるとよいです。

「文七元結」も「芝浜」も古典も古典 
もう わかりやすい 噺です。

「あん時の芝浜が最高だった」などと自画自賛って、
そもそも古典古臭いじゃんと文句ばかり垂れていた 
異端児の談志が この歳になり 癌を患い また生きて
 
それでも 「ありがちな古典にゃしねえよ」
の気構えを全身にみなぎらせてやってくれる 
そこのところの「芝浜」が よいのです。

堀井憲一郎さん曰く 
「立川一門は おそらく落語をいちど体の中に通す 
その上で言葉をすべて自分のモノに変えて喋る 
そこが刺さるか否かの分かれ目なのかもしれない」と 
言っていました。

が、そういう修練はどの噺家さんもやっていて、
格別立川一門が特別ということはないのでしょうが、
やはり、そこは談志のチカラ 
としか言いようがありませんね。

「文七元結」 
五十両落として死のうとする男を 
欄干でどう止めるか 
…こういうシーンでは 話しながら談志は

「うーん ここがおかしいんだよなああ~ 
 こういう風に手を差し伸べるのは無理がある 
 こうじゃない こうじゃなくちゃ ならねえなあ~」

なんて 話しながら演じながら 
自分でダメ出しをする 

そういう 興ざめになるような 
楽屋でしなさいよ的なことをはさんでも 
全体的にだらけないのです 

むしろ味が生まれる。

そういう作りものの噺なのに 
それでよしと 流せばよいのに 
話しながら 自分で修正するなんて
禁じ手を出してくる。

「どこまでいっても 作りもん だからね」 

こういう斜に構えながら 内実、
どんどん引き込んでゆく手腕は、
さすがに本物の芸と 久しぶりに熱くなりました。 

映像の上映でこうなのですから 
ナマではどれほどのものだったのか…

「芝浜」はラストを変えてしまったと聞いていましたが 
実際そんなことはなく、ラスト前のつなぎのところを
大きくいじってはいて、そのいじりのせいで 
ラストがより際立ったという内容でした。 

満足。

えっ? どんな噺かって…? 

どうしようもない 
のんべえ親父の噺ですよ 

両方とも。

ちなみにDVDで発売されていますから 
だまされたと思わなくて…
味わってみましょう 
こういうものを。



フォルム上映のみ 本人の出演はなし 

…そういう触れ込みでしたが 
合間にご本人お顔をだしてくれたのは 
嬉しかった。

むずむずされたのでしょう おそらく。

命名 人間モドキ[紋谷のソコヂカラ]

投稿日時:2010/09/28(火) 08:33

体が鈍るのは、どうにも気持ちが悪いので、
夏は、近所の住宅街の真ん中にある、
区民プールに通っていた。

25mの屋外プール、華やかさはなにもない、
入り口のおんぼろな発券機で、
入場券を買い、そのまま更衣室に、
シャワー室の向こう側の出口が、
もうプールサイド…という 
まことに僕好みの、
単なるプール…
1時間100円也。

こういう気楽さが好きで、
通っていたのだが、
行く時間を間違えると
トンデモナイことになる。

25mプールが、少年少女で溢れかえる。

ある日曜日の午後、実際に数えてみたら 
25mプールに145人“浸かって”いた。

…ちゃんと数えたから間違いはない。

そのうち120人くらいは少年少女
(こちらはなんとなく)

…平均年齢6~7歳 という感じ。

これはたまらんと監視員
(常時3名がプールサイドにいる
 ウォーターボーイズの妻夫木クン風、
 おそらく学生)に、

「いつもこんな感じになるの?」 と聞くと、

「…いえいえ 毎日 だいたい14時以降です
 子供たちの学校が終わったら…こんな感じです」

というので、早朝に来てみるとガラガラ 
あの騒がしさから一変していた。

♪快適快適 

…ある日はプールに中に僕ひとり 
…なんて日もあり、
そうなると3人の妻夫木クンは 
僕のためだけに炎天下仕事をしているわけで、
優雅に水の上を漂っているだけだと、
なんだか申し訳なくも思うので、
バタフライなど披露してみたりして、
ヘロヘロになったりして
…なんだかなあである。 

こういう時は「だれでもよいから、だれか来て」と
勝手な気分になる。

そう思っていたら、珍しく
(ほんとうに高校生以上は子供の父兄以外は
   こないプールだったので)若いアンちゃんが
4人で入ってきた。

しかし、“なにか” を期待して
夏のプールにやって来た彼らに、 
このプールはお気に召さなかったようで
…始終、盛り上がりにかけていた。

帰ろうと更衣室で着替えていると、
シャワーを浴びている彼らの話声が聞こえてきた、
ひとりが大声で、

「… シャワー浴びたらさ~
 ルービーぶちかましにいこうぜ!」

    …? 
 …なにを言っているのか最初はわからなかった?? 
    …わざとこういう言葉を使っているのか? 

しかし、かれらは

「いくべいくべ」「おおっ」 

なんて普通に会話をしている。
たぶん、わざとではなく、
普段の会話、そのままのようだ。


銀座で紋屋をしている時分、
バイトは学生クンにお願いしていた。

「もんやさん、カウンターのお客さん
 イモ焼酎を牛乳で…
 半分半分で割ってほしいそうなんです
    …いわゆるハーフ&ハーフ“的な”…」

「マジ?…牛乳ないから 買ってきて」

「わかりました …でも おつまみ、お刺身ですよ
 オレ的には…ありか なしかって言われたら…
 なしなんじゃね(語尾あげる)的な…」

「…あるか なしかで言われたら
 僕も なしなんじゃね(語尾あげる)
   …だけど、それでもお客様は神様…的な…」

こういう、言い回しが、店を閉めたいまでも、
たまに口をついて出てきてしまうのは、困る。

言葉というのは、安きに流れやすいと思う。
別に、日本語の乱れをどうこうとは思わないが、
言葉ひとつでその人間の価値が決まる時も
あるとは思うので、なるべく気をつけたいと思う。

先日、そのバイト君からメールをもらった、
すでに社会人3年生で、立派な営業マン。

「…最近、ワーキングプワーなんで…」
とメールの文中にあった。

彼は、立派な企業のれっきとした正社員のはず、
この言い回しは、おかしい。

もちろん、何気なく形容したのだろうが… 
彼が「人材採用関連の会社」で
働いていることも合わせると、
ありかななしで、なし。 

よほど返信で一言と思ったが、悪気もなし、
メールでの指摘は、角がたつので、
今度、面と向かい伝えようと思う。


朝のラッシュの銀座線…新橋駅のホーム 

僕がもっとも苦手な場所であります。… 
日本人の体型では合わない人もいるのに、
計ったようにピッチリとしたスーツ、パンツの裾は短く
(わが母の世代用語では“つんつるてん”)

…関西人でもないのに(関西人はよいのです)
茶の靴…この場合、スーツに縦じまの
ストライプのパターンが多い
(関西人でもないのに)

ノーネクタイで、シャツの襟は高く、ひとつボタン外し、
髪の毛は立たせて、視力が高くても伊達メガネ…

そして、みなさんうつむいて携帯で無料ゲーム、
座っている場合は、パソコン開いて、
なにやら眺めている。

僕は彼らのことを“モドキ” と呼んでいる。

…そう。…マグマ大使に出てくる悪の帝王の手先の集団
“人間モドキ”のモドキであります。

※ご存じない方に:
   ゴアの命令で、ルゴース星人が作り出した植物生命体。
   黒ストッキングを被ったような容姿をしていて、
   人間態で暗躍する。
   人間モドキがガムの熱線にやられてドロドロに溶ける
   特撮シーンには、寒天が使われた。:Wiki引用)

このモドキがもっとも多く出没する…
それが「銀座線新橋駅の“狭い”ホーム」なのです。


ショッカーじゃあダメなのか? 
と疑問に思われるでしょうが、
ショッカーはああみえて、強いのです。

「イー イー」言っているだけのように見えますが、
なかなかどうして根性があるのです。
一般的な人間より強い→れっきとした戦闘員。 
モドキの様に、人間社会に紛れこむなんて
卑怯な真似はしません。

いや、銀座線のサラリーマンの若者も、
がんばって仕事してるんじゃないの 
…確かに。

…でも、あのモノマネファッションに
浸かっている以上、たかが知れているのです。
だから 先輩諸君、会社の部下が、
モドキに見えたら、喝!です。

「人間見た目だぞ」
とか、

「そのままじゃ溶けてなくなっちゃうぞ」
とか

なんでもいいので、脅しながら…
正しい道に導いてあげてください。

なんでこんな話を…というと、
先日モルドバの女性と話す機会があり、
モルドバに関しては、旧ソ連で
20年くらい前に独立していて、
いろんな面でルーマニアに似ている
ということくらいしか知識がなく、
でも彼女、お父さんが京大の教授で、
産まれたのも京都で…

必然、京都弁(ほかに4ヶ国語は喋れるらしいが)で、
大学で地学を学び、オーストラリアでマスターまで修め、
いまはデンマークで「移民政策」に関わっている
という女性で、


「うーん どこの国の話をしていいのか困るなぁ…」
悩んでしまう。そんな流れの中で

「日本人…最近、なんだかみんな同じに見える」
言われたからであります。

それは、その顔で、京都弁で、そういう話をされると、
なんだか妙に説得力というか、
これは、問題視しなきゃならないと思ってしまい。

「おなじに見えるよねえ…、君は知らないだろうが…
 マグマ大使…モドキで…銀座線が…」
と喋ってしまったのでした。

こういうことは、重なるもので、これまた先日、
香港の若きご夫婦の面倒をみる機会があり、
半日、ご一緒して仲良くなった。

この夫婦も、日本は綺麗で楽しいけど、
人間的には個性がない…と指摘を受けた。 

相手が、モルドバ産まれなら仕方ない気もするが、
同じアジアの同胞に、ただ、やられている
わけにもいかないので、
ちょっとまて、
最近のオタクラは、いかがなもんか?
と切り返してしまった。

たとえば、
「領海侵犯の確信犯なら取り調べは当たり前じゃない?
 …プロバガンダだとは思っていても、
 実害が出始めると、なんだかなあ…と思うよ」

すると、
「反日 抗日感情 なんてワタシタチにはないわよ。
 香港と中国は似ていても違うし、
 あんなの政府と一部の人とひと世代前の人の感情よ」
と言う。

ご夫婦で日本に遊びに来る、ブルジョア層…
のごく当たり前の意見。

「人口は大勢いても、みんなバラバラ、
 国が成長途上だから、そのひずみの分だけ、
 考えも生き方も違うの。
 日本人は、いちように豊かだから、
 みんな似てきているんじゃない」

「たぶん11億人くらいの中国人は、
 日本なんかのことより、自分のことが
 優先であることは分かるんだけど、
 見聞きする範囲では、国を挙げての
 国民感情の象徴のように見えてしまうよ。」
と言うと、

「いいじゃん、あなたは私たちと今、
 一緒にいるのであって、いま、ここが楽しければ、
 その範囲で中国人といると楽しい…
 ってことで」 

確かにそうではある。

こういうことをさらっと言えるのが、
個性で、こういう会話ができれば、
モドキから卒業出来るような気がする。 

こういう話の結論は、嫌いではないのですが、
それでも根本に 「ひとそれぞれ」があるとなると、
黙って頷けない。

あるかなしかといえば、
「なし」なのです。
“ボク的”には…。

「ヒトソレゾレ」…結局最後は、
こういう言い方で締めくくるのは、
「逃げ」だと思う。

言うしかない場面は、日常どこにでもあるし、
やっぱり「人それぞれだから」
と言ってしまうのですが、
問題はプロセス。

どこまで考えて「それぞれ」なのか
…ということにあると思う。

イモ焼酎を牛乳とハーフ&ハーフ 
…飲み方としては「あり」だと思うけど、
お刺身には合わない… 

と考えて、でも人それぞれでお出ししましょ。

ルービーをぶちかます…仲間内ではありですが、
こいつはどうみえても「なし」でしょ。

銀座線の新橋駅のホームの「モドキ軍団」… 
その格好もひとそれぞれ、

…違う違う それぞれじゃない
…おんなじ…。


ハーバードのマイケル・サンデルは
“中立原則”と闘っている。 

講義の内容を読み、NHKでの放送も観た。
怒られるかもしれないが、昔流行った
「究極の選択」に似ている会話ゲーム
のような気もするが、

「なんでもひとそれぞれ…と結論付ける前に、
 考えちゃどうだい」

という根本姿勢は、わが意を完全に得ている。



◇◇◇

「詩のボクシング」をはじめて生で観て(聴いて)きた。

 

大井町 品川区民会館小ホール。 
東京大会本大会(全国大会の東京予選の位置づけ)
入場料無料 席はすべて自由。 

この前に、第6回となる神奈川大会で、
初出場の女子高校生が優勝 
同じ大会に参加していた友人が、
「あれには勝てない」と絶賛していて、
そちらは観に(聴きに)行けなかったので、
リベンジを兼ねてその友人がチャレンジする
「東京大会」を観に(聴きに)出かけた。

舞台の中央が張り出し、リングを模している。 
対戦は1:1形式。 

双方がそれぞれ3分、自作の詩を音読する。

両者が音読し終えると、前方の11人の審査員が
赤、青の旗どちらかの旗を上げ、勝敗が決する。

完全な「印象対決」 
より届く詩を朗読した(と思われる)方の勝ち。

出場者は16人 
赤青双方に分かれてトーナメント対戦 
勝ち残りで優勝者が決まる。

テーマは設定されていないので 
いろんな詩が飛び出してくる。 

なかにはこれは詩じゃなくて、紀行エッセイじゃない?とか 
これは単なるひとりごとじゃない?とか、 

どうみても50歳くらいの女性が 
沖縄戦争の状況と心理描写を語りはじめた時は、
うーんこれはあなたの体験じゃないよね。などと、
ひとり、いろいろチャチャを入れつつではあったが、
出場者と観客の間で、真剣な空気が流れている
会場に身を置いていて楽しかった。

審査員のジャッジを見ているとは、
詩そのもののの出来、不出来はもちろんながら、
声の質や大きさ 顔や体格、身振り手振りが醸し出す印象…
など全体の合わせ技が重要なようで、
どんなによい言葉を紡いだ詩であろうとも、
音読でる以上「ライブ表現」が求められていた。

僕が好きだったのは「肉屋のおばさん」 
自家製のチャーシューの自慢話を朗々とうたった。 

そういうものでも詩になることが新鮮で、
一歩間違うと単なる、出店の口上でしかないのだが、
商店街を形容した語り出しから、その声の良さに惹かれた。

残念ながら、初戦で敗退したが…
あれは 僕が審査員なら勝ちにあげていた。

男性は想像的な文句が、女性は現実的な描写が
…傾向として多いように思う。 

あらためて、詩というものはなんじゃらほい。 
と感じたのでした。

全国大会は日経ホールで10月16日…
「噂の女子高生の朗読」をぜひ聴きにゆきたいのですが、
病院の検査結果の出るタイミングで、
思わしくなければ、それどころではない。


 

せんぷうき[紋谷のソコヂカラ]

投稿日時:2010/09/01(水) 21:48

我が家にはクーラーがない。
正確にいえば、2台…あるにはあるのだが

動かない。

1台は、むかし、
…22~3年前(頃)に友人にもらったもの、
もらったというか、麻雀の負け分を
こいつでと、持ってきた。
別にいらないと言ったのだが、
それでは気が済まないと置いて行った。

以来、引っ越す度にただ持ってきた。
もう動かなくなってずいぶん経つ。

もう1台は、
戸塚に引っ越す際に、取り付けたもの。

こちらも壁の飾りになって…
10年は経つと思う。


いつだったか、なんかのついでに電気屋さんに 
直してもらおうとしたのだが、

「…うーん この型は
 もう部品もないし無理ですね。
 買い換えた方が…」

と 言われた。

やはりである。
最近の電気屋さんはやる気がない。

特に、都会の電気屋さんは、
…言いなおそう…

「僕の知る限りの範囲で、誠に恐縮ですが、
 都会の電気屋さんは

 …直そうという気構えがない」

そもそも、学研の付録が好きで、

メカ二ズムとか 
組み立てるとか 
配線とか…

ああでもないこうでもないが好きで、
始めた仕事ではないのか。

始めてみると、
町の電気屋さんならではの
きめ細やかなサービスを愛し愛され…

「ほら、奥さん映るようになりましたよ」

「…えっ? …ビールですか?
 …まだこれから仕事なんで
 …いや…はい…暑いですね 」

「…はい? …えっ
 仕事がら 重いものも持つんで
 ええ 筋肉ついちゃって…」

「… えっ 旦那さんは
 出張で今日はお留守…なるほど …」

「…汗?ええ …お風呂?
 …いや だうじょうぶです
 ……ほん…とに…いいんですか」

 … そういうこともあったりして、

電気屋さんになってよかったぁ!!
…ではないのか? 



クーラーを使わない。…などというと、
そういうポリシーなんですね。とか、

健康に気を使っているのですね。
とか、言われるが、

まったくそういう主張地味たことは、
1ミリもない。

ものぐさ なんです。単に。 

壊れたら壊れた… 
これが携帯やパソコンなら別、
白モノ家電なら 冷蔵庫は別…

それ以外は どうでもよい。 

たまたまタイミングで
電気屋さんに会ったら…

ところでうちのクーラー直りますか?
とは、聞くが、
相手にやる気がなければそれまで。

その程度のこと。

別に死にはしない。

 …いやいや 
 今年の暑さはそんなこと言っていられないのでは…

 …いられなかった。
 …というのも、数年前、から使っている
 扇風機も壊れてしまったからだ。

レトロ調なデザインが気に入って
買ってしまったのが いけなかったのか、
8月に入りお盆を待たずして風を送るという 
最大にして唯一の機能が失われた。

回るには回るものの、風がこない。
扇風機のアイデンティティーの崩壊。

少し、メカに強くて。 手先が器用なら…

「どれどれ、ふむふむ
 なるほど…チョイチョイ」 

なのだろうが。

こういう時に、
学研の付録にまった興味がなかった 
僕のような人間には、為す術がない。



Y電器に出かけた。  

相変わらずすごい人である。

ポイントなるものの
(まったく興味がないので詳しくはないが、
 来店すれば割引につながるらしい)が
なくなったようだが、

それでも週末には 
何を買う訳でもない
お客さんがたくさんやってくるようだ。

僕にはその心中はまったく理解できない。

…とにかく 扇風機を…と売り場に向かう…

??

この暑さなんだから 
各メーカーの商品が所狭しにあるかと思いきや

…ない 

業務用の大型のタイプと 
なんだか大きな冷風機 
なるものが数台あるだけで、
いわゆる家庭で普通に使う扇風機がない 

?? …

店員を捕まえ聞くと… 

「ああ …扇風機ですか。
 もう終わりですね」 

にべもない…とは、まさにこういう感じ。

もう…終わり? 

はい? …えっ? 
まだお盆前で こんだけ暑いのに?

「ええ。もうこの時期ですから…ね」

…ね…じゃない ねじゃ。
「あなたももちろんお分かりでしょ。
 当然ですよね」みたいに言うな。

「…これだけ 暑いのに?
 置かないのはおかしいんじゃないの?」

「…はい。まだ暑いですよね」

…だめだ やる気がない。 

それでもこちらは死活問題と…

「なんかないですか?なんか?」と食い下がると
…少しお待ちを…と奥に向かう店員。

ほらみろ あるじゃないか 
そうだろそうだろ。 

マニュアルで動くなよ 
お客さんの立場に立ってみようよ。

…「これしかないですね」

「!?…ちっさあああ~(小さい)!」


…ということで 
わたくし こいつで 

8月は乗り切り、本日9月に突入した。

最後に、こいつの値段は1600円 


なんだかY電器のポイントがあり、 
そのポイントで買えると言うので、賄った。

勝ったのか負けたのか。 
よくわからない。  

電気屋さんにも事情があるのだ。

包丁 お研ぎします[紋谷のソコヂカラ]

投稿日時:2010/06/13(日) 11:18

ある日、ポストに1枚の紙が入っていた

…包丁 お研ぎします

移動営業スタイルらしく、
明日の土曜日にうちの目の前の公園の脇に
一日中 停まっているようだ。

では、と早速、翌日行ってみた。

ちなみに、僕は包丁は、ぺティーナイフ1本で
すべてを賄う男であります。

銀座のお店でも 
愛用のぺティーちゃん1本しか使っていなかった。

オープンの際に 
ヨーロッパのどこかのメーカーの 
たいそうな包丁セットを頂いたが、触りもしなかった。
魚をさばくのも 肉を切るのも 
野菜の皮も剥くのも、ぺティーちゃん。

そうなると、いちいち洗ったりすのが面倒では
…と思われそうですが、
それでも、コンパクトなぺティーちゃん、
なんのことはなしです。

なにより、小さいということは
使い勝手がよいということで、
大は小を…ではなくこと包丁に限れば
絶対に小が大に勝ります。 

お試しあれ。

そうして、ぺティーちゃんを
始終酷使しているので、
当然、切れ味は落ちる。

たまに電動の包丁研ぎ機で磨いていた。

お店を閉じ、家でのつつましやかな料理の際も、
持ち帰ったぺティーちゃんしか使っていない。

しかし、使う頻度や量もさることながら、
自分への料理に、いちいち切れ味を気にしないので、
もう3年くらい、研ぐこともなかった。

よし、これはよい機会だ。

移動式のバンには、電動の研ぎマシンが3台設置してあり、
モノによってマシンを変えているようである。

いかにも、包丁をうまく研いでくれそうな、
人のよさそうなおっさん。



「案内の紙が入っていたので…」

というと、

「はい。こういうスタイルが効率がよいんで」という。 

前日に撒いて、翌日、営業。
間を置かないというところも狙いなのだろう。

聞くと、1日30本くらい磨くそうである。

ちなみに僕のぺティーちゃんは 500円也 
出刃や刺身包丁で1000円ていどの単価です。


◆◆◆1時間で出来るというので、
待つ間 このブログを書いている。◆◆◆

僕の住んでいる住宅街には、
季節ごとにいろいろな行商
(行商は古いですね 販売車ですか)
がやってくる。

冬は灯油の販売車。 
去年までは2社が競合している様子でしたが、
今年からもう1社新規に参入してきた。

古株をAB、新規をCとしよう。

Aが面白いことをはじめた、
灯油を入れるポリをレンタルするのだ、タダで。

寒い日などは特にですが、
手持ちのポリでは心もとない
そんな気分になることがあり、そんな時に、

「もうひとつ入れておきますか?…ポリは無料でお貸ししますよ」
 という。

そうしてそのポリには大きなシールが貼ってある。 
A社のロゴのシールだ。

ここがミソでありまして、A社のシールを張ったポリを
BC社の販売車に差し出すことは、はばかられ
…必然、シールの貼ってないポリと併せて、
A社の販売車を待つことになるのだが、
灯油がなくなりそうであれば、
いちいち待っていられないのも事実で、
そこを見越して、新規C社は、
A社の巡回の時間の前にやってくる作戦に出た。

A社のシールが張ったポリが家の前に並んでいるのを、
見つけては、根こそぎさらってゆくのであります。 
もう他社のシールが貼ってあろうがお構いなしに。

これに気付いたA社の販売員
(なかなか愛想のよいアンちゃん)は、

「くそー仁義もヘッタくれもないなあ!!」

と嘆いていた。

「ポリの色をなんというか もっとサイケにしてみれば 」
と提案してみた。

そんなこと言う前に 
僕も仁義を守りA社の販売車だけを
待てばよいのだろうが、
残念ながら寒さは仁義に勝るのであります。

「レインボーカラーとかさ、C社もさ、
  本音では、こ狡いことしているなあ…
  て良心の呵責があるんだと思うよ。
  そこに訴えるんだよ
   あまりあからさまに、A社専用とかアピールするもの品がないじゃん。
   …でも、ポリがさ、どこにもないレインボーカラーならさ。
   灯油いれながら…考えると思うよ。
   あっ…オレい狡い奴だ…て。」

「…なるほど かえって社長と相談してみます」

さて、今年の冬にはどうなっているか? 
楽しみであります。

ほかにもこの季節には さお竹屋や来たり、
年中うろうろ(失礼)しているのが 
廃品回収者 ほかに パン屋さんやお豆腐屋さん、
新鮮野菜の販売車もときたまやってくる。

銀座に通っていたころは、
氷屋さんや魚屋さんなんて販売車が
いつも決まった時間に決まったところに停まっていた。

7、8丁目あたりの風物といえば、
お餅の焼いた匂いと風鈴の音ですね。

呑んだ後、あの醤油の焦げた匂いはいけない。
なんともそそられるタイミングで刺激がやってくる。

おもわず立ち止まり 買おうかどうしようか 立ち止ませる。 

匂いというものはすごい。

風鈴と言えば、“季”は、夏の梅雨のあとの夕方が
…定刻でありましょう。

少し遅くなり、夜のネオンにキラキラとした
風鈴というのも風情があるなあ
…というのは銀座で知った。

僕は銀座の風鈴売りのおじさんとは顔見知りで、
浅草のなに屋さんから仕入れてるだの、
もうこの道30年だの、
風鈴の種類と音の違い 
よい音色の風鈴の見分け方なんてことを 
なんとなく聞いていた。

そう思って聴き比べると 
たしかに違って聞こえるから大したものだ。

そうやって、家に持ち帰って 
ベランダに吊るしてみたりすると、
なんだかぜんぜん風情のない音だったりするのが不思議だ。

これはたとえばバリの風鈴。
竹とココナッツでできた優しい音のする
…あれです。

これも、ただいま現在 脇のベランダで 
カラコロカラコロ鳴っているのですが、
どうもバリの風情とは程遠い。

はっきり言って、ただうるさいだけであります。

温泉宿の朝飯 
お味噌汁があまりに美味しいので
「この味噌はどこで買えるのですが?」と聞くと

「売店にありますよ」となり、

買って帰って 自宅でつくると美味くない
…そういうことと同じなのでしょう。


音と言えば 
僕はよい声の持ち主がうらやましい。

ほんと、声の良い人はそれだけで
3割は得をしていると思う。

仕事でもプライベートでも 
良い声の持ち主はそれだけで魅力が増す。

同じ企画書でも 
声の良い人にプレゼンされると 
なんだかよい企画に思えてくる。

友人のコピーライターAさんは、
まことに渋くよい声の持ち主。

彼が、飲み屋のカウンターで友人と呑んでいたら 
近くの女性に声をかけられ そんな縁で結婚された。

後日、奥さんに聞くと

「喋っている声があまりに素敵で、
   わたしの方から声をかけたんです」 
と言っていた。

うらやましい。

女性もよい声の持ち主は、男のほうから寄ってくる。

多少の性格やみてくれなどは 
そのうち慣れたり飽きたりするものだが、
声は衰えない。

僕のように単純な男は特に声に弱い。
ごくたまに…ああ!

…その声はやばいと思わせる女性がいるので、
注意して生きなければならないと思う。



◆◆ 1時間たちました ◆◆◆

女性の声について 
…もう少し 念入りに 
しつこく書いてみたいのですが… 
時間切れです。

「出来てますよ」…と、
人のよさそうなおじさん

ぺティーちゃんが復活しました。



こうなると、無性に
…なにかを切ってみたくなる。

よし、ダイエーに行こう。

※季節のせいで、ほんわかな話題が続きました。
もうすぐ「恐怖の検査」がありますので、
次回はCTと血液検査の結果、
併せて主治医との話しをご報告させてください。 

梅雨に入ります ご自愛を。


天気の良い日は、銭湯に行くのだ[紋谷のソコヂカラ]

投稿日時:2010/06/05(土) 01:11

自宅の小さな風呂にばかり浸かっていると、
人間がせせこましくなってくる。

通勤でせせこましく、
職場でせせこましく、
女房とも…せせこましい

月曜日の会議室はせせこましく、
金曜日のメールの内容もせせこましい…

たまに早く帰れば 
子供との会話はせせこましく、
テレビのニュースやコマーシャルも
せせこましいことこの上ない。

ついでに言うと、サッカーW杯 
日本代表のFWの動きはせせこましく、

参院選に向けた 
政治家の権謀術数とそれを揶揄する、
みのもんたも、せせこましい。


普通に生きていても、
なんだか、知らないうちにまとわりついてくる、
こういう世の中の“せせこましさ”を洗い流したい
そういう人は、銭湯に行くのであります。

「下町じゃないんだから…ウチの近所には銭湯ないんだよね」

そういう人は、電車に乗って 
車に乗って 
自転車にまたがり
…それでも行くのです 

銭湯に。

探せばあります。
 
「天然温泉 極楽湯 噂の岩盤浴とアロママッサージ
 7つのお湯があなたを癒します! 
  湯あがりは お休み処 極楽へ!
 冷えたビールと海山の幸があなたを極楽にいざないます」

こういう所ではダメです。
結局、せせこましくなってしまう。

「おい! たまには銭湯でも行くか?」

「えっ!? 子供たちは…?」

「ほっとけ 留守番させときゃいいんだよ」

「…でも、明日のお弁当の準備が…」

「うるさい! 行くぞ!」

こういう男にあなたはなりたい? 
ワタシはなりたい。

そして、別れるのです …番台で 
そう しばしのお別れ…

チラッ

「…じゃあな …外で待ってるからな」

「…はい」

…たいがいにして 絶対に 風呂は男が早くあがるもの。

「お~い でるぞ!!」

「お~い 出るからな!!」

「………はぁ~い」


♪横丁の風呂屋 ♪いっしょにでようねって言ったのに 

そうそうカタカタ 
鳴るんです。

湯あがりは浴衣 
うなじにかかるほつれ髪…

くう~これですこれ。

銭湯は初夏が最高です。

なんだか冬のイメージに思えますが、
それは 神田川 一間の下宿 苦学生 
段ボールのみかん箱   太宰治 ニーチェの時代の話し、
カタカタ鳴りすぎの時代。

変わらぬ良さは 初夏の銭湯です。

もちろん ひとりでも 最高です。

平日は無理でも 
週末の早め(この早めが大切)
の時刻に家を出る。

商店街をそぞろに歩く 
…えっ? 商店街がない?? 
…ダメだなあ…引っ越してください。

えっ…引っ越せない 
…仕方ないなあ 
…じゃ 商店街まで車で 
はい!探して!

「陽が長くなったなあ~」 

これ決まり文句。 
ひとりそぞろで口に出る。

銭湯は、商店街の外れにあります。
そういうもんです。




看板はでかい 
もちろん漢字かひらがなの屋号。

げた箱につっかけ(サンダルも可)を放り込み 
ガチャ…
下足板。

たてつけの悪い 
引き戸を開けると 
番台から いらっしゃ~い

番台には 若者は似合いません 
とくに女性はNG。

おっちゃんか おばちゃん 
出来ればひなびた(失礼)
おばあちゃんだったりすると最高です。

「!…よ…!よんひゃく…ごじゅうえん!?」

そうなんです。
最近の銭湯代は 450円が相場。

僕が上京した頃は、180円でした。 

こうなると毎日、気軽にはこれないですね…もう。
月に1度の贅沢の感ありです。

気を取り直して、早い時間の銭湯は 
じいさんがちらりほらり、
この「ちらりほらりのじいさんばかり」
の風情がなんともよいのです。

壁の向こうの女湯は 
ところ変わってばあさんばかり…?
見たことないのでわかりません。

湯殿の床はくすんだタイル張り 
天井は高く 湯船の奥の壁は 
全面にペンキ絵…絵柄は富士山か
遠州灘に三保の松… 
風呂おけは黄色の…赤い文字で“ケロリン”



そのまま湯船に向かってはいけません。

じいさんに怒られます。
ここでは主役はじいさんです。
マナーを守る。

まずは、軽く体を流してから… 
一呼吸…おもむろに静かに湯船に…

このとき前は隠すこと 
これ大切 
どんなに自慢の品物でも 
ここは隠すこと。

そうしないとじいさんに怒られます。 
ワシも若いころは…ずいぶんと…なにがなにして…

早いお湯はたいがいにして熱い… 
がまんです。 
心で泣いて顔はどこまでも笑顔です。

がまんです。 涼しい顔です 
…とここまできて はじめて 
じいさんたちは 
この若僧(じいさんから見ればたいがい若僧)
を認めてくれます。

出たらゆっくりと体を洗います。 
学生時代は、ここでパンツなんか洗ったりしてました。
が、そういうことはもうしません。

体の洗石を流したら、もう一度湯船に 
タオルは頭の上。

歌のひとつも唄いたくなったら、どうしましょう?

それは上級者です。 
できれば都都逸(どどいつ)が定番です。

「…はあ~ あじさいわあ~ 馬鹿な 花だよお~♪
 根のない 棒に絡みつくぅ~♪」

こういうやつです。

ちなみにこれは あじさいを女性にたとえているのですね。
 
まったく女というやつは、仕方のない…
どうして、根のない棒(根性も男気もない男)に
惚れてしまうんだろうか。
という唄です。 

「人の手前は薄茶と見せて 心濃茶の…四畳半」 

「国のお方と知らずにいたが 唄で気付いた…安来節」

なんて感じはわかりやすいですね。

寅さんの常套句の

「信州信濃の新蕎麦よりも わたしゃあなたの…そばが好き」

これも都都逸。 

庶民のユーモア 七・七・七・五の定型詩です。

この七・七 からの始まりのリズムが僕は好きです。
21文字かけて枕を作り 
最後の5文字で落とす 
ここんとこのユーモアが修練された感じが好きです。

さて、唄い終わったら とっとと退散です。

おっと…長居はいけねえや 
そいつはどうも粋じゃねえから。



銭湯からでたら出来れば屋台で一杯 
と行きたいものです。

もちろん冷で… 。


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