紋谷のソコヂカラ

第4次 お掃除隊 始末記 [見舞百景]

投稿日時:2009/05/27(水) 11:32

まったくどうも信じられない。
どうして、彼らはやってくるのだろうか?
一銭にもならないのに。
せっかくの土曜日だというのに。


 
これが、その家の主に、過去に命を助けられたとか、
返しきれない恩があるとか…
なにかそういう、納得できる理由があるというのならまだ分かる。

しかし、そんなものは髪の毛の先ほどもないのに、
彼らはまたやってきた。
我が家を掃除しにである。
 
新築のマンションで、部屋がちらかっているから、
ちょっと片付けにきました。なんていうのなら、まだよいのだが、
築十七年の一軒家である。

おそらく、上物の資産価値は購入時の1/5位まで
目減りしたボロ家である。
 
その上、ここの主は、掃除が苦手。
「四角い所は、どう頑張っても丸くしか掃けない」
そんな、男だ。
 
外面はよく、内が弱い。
見えるところだけキレイならそれでよいではないか。
と、生きてきた主である。
 
なにをかいわんや…
掃除のし甲斐があるといえば、これほど、
し甲斐のある家もそうないだろう。
 
そんな我が家をモノともせずに彼らは、
今日も笑顔でやってきた。
 
僕(主)は、もう、すでに、
申し訳ありません。 とか、
ありがとうございます。 とか、
感謝しています。 とか、
助かります。とか、 
 
そういう当たり前の言葉では、
迎えることはできないところまできてしまった。
 
この際、思い切り開き直り…待ってました。 
とか…言えるわけもない。
ということで、ただ黙ってすべてを受け入れることになる。
 
できるなら、お掃除隊ひとりひとりに、
なにか未曾有のピンチが訪れ、
僕が解決できたら、少しは恩返しが出来るのだろうなどと、
思ったりもしてしまう。
 
お掃除隊のひとりに、今回は、思いきって、
「どうして、あなたは来るのですか?」
と聞いてみた。
 
「なにを卑屈なことを…」
らしくない…という顔で応えられてしまった。
 
第4次ともなると、お掃除隊の面々は、
勝手知る我が家となっている。
各々が軍手にマスク姿になるや、
リビング、2階、風呂場に階段…と動き始める。

僕は、外に向かい、夏に向けて、
じゃんじゃん伸び始めた、
家の回りの雑草を抜きに出た。
 
見てください。この蔓の生命力。



庭から雨どいを伝わり、
2階の手すりを抜けて、
屋根に届かんばかり。
 
なぜ、あなたは、そんなに元気なの? 
この蔓を引き剥がし庭に通じる階段を埋め尽くす雑草を、
抜き、抜き、また抜いた。
 
2時間ほどして
(お掃除隊は午前中に来てくれるのです)、
お弁当を食べ休憩…


 
1次~3次までのお掃除隊の活躍で、
粗大ゴミや捨てる衣料品などはもう我が家にはないため、
出るべくして出る、生活ゴミがすでにゴミ袋に分別されている。
 
「いやあ。4回目ともなると、楽ですね」

「そうそう。もう1回目は大変だった」
 
「庭は、次回、ぜひやりたいですね…」
 
もう、業者さんのような会話であります。
ひとことも口が挟めない。もちろん恐縮してであります。
 
「もんやさん、 カーテン買いに行って来てください」


 
「はい。わかりました」
 
どうも、前回のお掃除隊の時に 僕がカーテンを必要だと
言ったらしいのだが、本人は記憶にはない。
僕自身は、カーテン…別になくてもいいのでは…
という人間のはずなのだが…
 
せっかくのご好意だし、まあ、確かに、
この寸足らずの、しかもピンクの、
…いつだったか、友達夫婦につけられたこのカーテンは、
かなりいただけないし、
 
2階も、大切な本が、これ以上、
西日に焼かれてゆくのを見るのは忍びがたい。
 
ということで、もうひとりと、近所のダイエーと
島忠に買出しに行くことになった。
 
残りの皆さんは、自宅のお掃除を再開してくれている。
1時間半…戻ると、もうあらかたのお掃除は終了していた。
 
もう洗濯機は何回転もしたのだろう、
選択されたシーツやバスマットが、2階に干されている。
 
そして、カーテン付け替え、
こちらもお掃除隊の皆さんがやっつけてくれた。
 
キレイになった部屋に新しいカーテン…
なんか自分の家ではない感じがする。
 
そして、風呂場…
実は我が家の風呂場は、電気が…ライトが点かない。
 
???…意味がわからないですか。

はっきり言いましょう。
 
「1年前に、お風呂場の照明が落ちて以来、
明るい風呂場で風呂に入ったことがないのです」
 
はい。ええ…そうです。
1年間…ずっと 真っ暗なお風呂場で、
湯船に使ってました。
 
…もちろん、電球は付け替えようとしました。
…でも電球の問題ではないのです。
 
どうも、原因は、配線か接触のようで…
もちろん電気屋さん呼ぶしかない…そうは思って…
思っていて…ここまできてしまったのです。
 
そういう男です。 僕は。
そのことを、お掃除隊のひとりに告げると…
彼は、早速…台にあがり、中を覗き込みます。
 
「たぶん、無理っすよ。 
 いいです。いいです。…今度、電気屋さんに…」
 
しかし、彼はあきらめません。
 
クレ551…っていうんですか、
そのノズルを中に差し入れ…ゴリゴリと削り…
 
15分後…パチ!… 

「点きましたよ」
 
なんと、我が家の風呂に、1年ぶりに照明が点いたのです。
 
馬鹿にしてますか? …してますよね。
でも、僕は、本気で感激しました。マジで。
 
「だいたい、こういう時は、中がさびているんです。
 だから削ってあげれば…ね」
 
すごい。
僕は、考えました。 
こういう男になりたい…と。
 
人間はピンチになった時に、最後はその生きる力が勝負であり。
こういうことができる男が、最後はいちばん偉いのだと。
 
普段は、みんな生き死にに関わるピンチなどなどないから、
分からないだけで、本当は、こういう時に頼りになる、
そんな男が、男なのだと。

えっ!?…風呂場の電気は生き死にに関係ない?
…そういうことを言っているんじゃありません。
 
たぶん、大きなピンチが訪れたとしても、
僕などは、理屈や建前を言うだけで、何の役にも立たない。
使えないその他大勢になってしまう。 
そんな自分の小ささを痛感した出来事でした。
 
ついでに、言うと、キッチンの流しの上の電灯も、
もう点滅状態になって、3ヶ月。
 こちらも、自分で、思いついたときに、
蛍光灯を買うのですが、
 
「まあ、 これで大丈夫だろう」と買ってくると… 

長い
 
また、気がついたときに 
「じゃあ …このサイズだろう」と買ってくると… 

今度は短い。
 
オマエは、帯に短し、襷に長し(流し)か…
流しだけに…なんてことを言いながら
腹が立ち…ほっておいたのですが、 
 
今回、ジャストサイズが収まり、
見事、流しも明るくなりました。
 
夕方、少しまでに第4次お掃除隊も終了。
では、打ち上げに…というと 
先ほど、風呂場の照明を復活させてくれた彼が、
 用事があるのでお先に…と帰ってしまいます。
 
「えっ! せめて、ご飯を食べて、
 その労を、その活躍を讃えさせていただきたい…」
 
しかし、どうもどうも…と愛車のパンダに乗り込むと、
行ってしまいました。
 
その後姿を見送り、隊長が言います。
「彼は、われわれ、他の隊員の中では、
 もっとも掃除とは無縁の性格と思っていた。
 いったい、何が、彼をここに向かせるのか…わからないなあ~」

…と。 
 
本物の男は去り際も格好いい。 
その理由は自分の中…だけにある。
僕は、またまた考えさせられました。
 
以上、第4次お掃除隊始末記でした。
別名、紋谷不始末記…ですか。
 

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