紋谷のソコヂカラ
今年,そのセンスに影響を受けました
投稿日時:2008/12/14(日) 21:35
今年は、事情が事情で、ほとんど映画館に足を
運べなかった年でありました。
たぶん人生で一番、少なかったんだと思います。
同様に、寄席や舞台、スポーツのイベントやコンサートも
まったく行けなかった年で、
エンターテイメントで刺激を受けることが好きな自分には、
本当につらい年でした。
本当は、抗がん剤の副作用さえ収まれば、
どんどん出かけたいのですが、
その許された時間が少なすぎました。
その反動ですか、自宅で楽しめる
小説やビデオ、テレビドラマなどは、
よく観ていました。
2週連続で、つまらない病気の話しをしてしまったので、
今回は、終始くだけた感じでお送りします。
◆◆◆ 今年観たもの 感じたこと ◆◆◆
●広告批評の「2008広告ベスト10」
今年のNO1に選ばれたコマーシャルは、
「大人グリコ」
そもそも、こういう賞の基準は明確ではないものの、
あの広告批評が、天野祐吉が選ぶのだから、
という1点においてステイタスはある。
推し量るに、「25年後のサザエさん磯野家」という設定の斬新さ、
豪華なキャストで作り上げたという話題性…
このあたりが評価されての受賞だと思われます。
しかし、このコマーシャル、斬新なネタの割には、面白くない。
「せっかくの素材なのに、もったいない」という印象しかなかった。
カツオ36歳 ワカメ34歳 タラちゃん28歳 イクラちゃん26歳…
あのアニメの普遍性との違和感は、キャスティングの華麗さ。
25年後に、「ああなっている」イメージと
あまりにかけ離れているせいでしょう。
また、肝心のサザエさんがいないということも…
シリーズすべてを観てはいないので、今度継続されてゆくなら、
そのセンスに期待したい。
出来れば、いかにもサザエさんらしいストーリィーを
25年後風にイジルくらいの演出が欲しい。
その意味でも、サザエさんの登場が待たれる。
コマーシャルも随分と様変わりした感があります。
露出量が多いCMが限定されてしまった。
いま、一番勢いのある業界や企業という構図は当たり前ですが、
露出量が多く、つまらないとなると、
まったく勘弁して欲しい。
その筆頭格は
通販と生命保険とパチンコもの
それぞれに、勘弁して欲しい理由が違いますが、
否定で時間を裂くのはもったいないので避けます。
それにしても、 パチンコ加山雄三は
…ないと思う。
アグネスラムやダースベイダーもなんだが、
若大将シリーズを愛する自分には、
あのナレーションはつらい。
シリーズモノでは進化を感じます。
缶コーヒーのBOSSは、どんどん悪ふざけが、
いい感じになっている。
八代亜紀にも笑えたが、鈴木京香の設定は楽しい。
キャラクターがある程度、認知を得ただけに、
この悪ふざけが自由に出来るようになった。
それにしてもこのCMのセンス、、
トミーリージョ-ンズご本人はどう感じているのか、
ぜひ聞いてみたい。
同様に、ソフトバンクの白い犬のお父さん。
始めは、ハナについて仕方なかったが、
最近はなれてしまった…くやしい。
犬だけに…チクショウという気分である。
最新の黒人の息子が山に登るバージョン、
バックの曲が映画「八甲田山」には、やられた。
最近の僕のお気に入りは
高橋の手帳
短い作品ですが、こういうものがセンスのある
クリエイティブと、久しぶりに嬉しくなった。
ちなみに、高橋手帳 といえば、
「高橋をうならせたら 50万円」という、
コピー募集を新聞広告で見たことありますか?
もう13回も続いている、企業主催のクリエイティブコンテストです。
賞は、「身近なひとの何気ないひと言」と
「商品企画(こちらは、高橋での手帳の企画募集でもある)」
の2つあります。
最新のコンテストの作品を紹介すると、
身近な…部門 大賞は
努力したら、できるように産んである
このコピーの応募者のコメントは、
高校入試目前に成績が伸び悩んでいたので、
母に「どうしてもっと頭がよく産んでくれなかったんだ…」
と愚痴った僕に言った、母のひとこと。
だそうです。
審査員のひとりである椎名誠賞は、
だまってついていかない。
いろいろ言いながらついていく。
はじめ、公園で遊ぶ子供に…の、ひとことかと思いましたが、
九州男児の男性が「だまってオレについてこい」と
プロポーズしたときの、妻となる相手の言葉だった。
ほんとうに、その通り、
いろいろ言いながらついてきてくれる妻です。
と応募者のコメントでした。
商品企画部門の大賞は、
予定がありすぎるあまり、
予定外の事ばかり起きてしまう人のための手帳
でした。
こういうコンテストを内外に公にしている企業ですから、
コマーシャルのセンスもやはりという出来です。
来年の手帳のCMなので、期間限定。
今から見るのは難しいかもですが、
観ることができたら、集中して、ちゃんと観てください。
ちなみに、バック♪は、あややの「めっちゃホリデイ」です。
広告批評は 30周年を機に、休刊となります。
天野祐吉曰く
「マスメディア広告万能の時代は終わった」
というのがその理由。
センスもへったくれもないCMばかり観ていると、
つくづくこの言葉の意味を感じますが、
休刊は残念でなりません。
各社広告代理店様、制作会社様
…なにとぞ、クライアントに負けず頑張ってください。
●映画については、ほんとは、語る資格がないです。
それは、やはり映画館に足を運べていないから…
それでも、レンタルベース(テレビ画面ベースとも言う)で
観た範囲で、挙げますと、
バットマン ダークナイト
これが本年度NO1です。
8月の公開以降、評判は聞いていましたが、
実際観て、その面白さにびっくりしました。
バットマンの映画化は
ティムバートンの1作目から、
リターンズ~フォーエバー~ロビン~ビキニング
と監督、キャストを換え、
さまざまに行ったりきたりしていましたが、
すべて凡作。
一息ついての今回は、見事な傑作に生まれ変わりました。
「007 カジノロワイヤル」もそうですが、
このシリーズが“一息ついて”は傑作を生み出す
方程式なのでしょうかね。
観た方には、言わずもがなでしょうが、
バットマン永遠のライバル、ジョーカー役の
ヒース・レジャーが出色の存在です。
「羊たちの沈黙」のアンソニーホプキンスを
髣髴とさせる存在感です。
上映時間は2時間30分。
最近では長いですよね。
それは、これでもか…というストリー展開のせいなのですが、
凡作なら、2時間目あたりで切るところ、
切らないで続けたことで、このジョーカーの存在感と、
作品全体のテーマが明確になっているので、
まったく必要な長さなのです。
ストーリーは追いません。
ハリウッドカテゴリーのひとつ、
アメコミ(アメリカンコミックス)の実写化映画は、
スーパーマン ワンダーウーマン、スパイダーマン、
ハルク、スポーン、X-メン、ファンタスティックフォー、
ディックトレーシー…と軒並み公開されています。
中でもスーパーマンとスパイダーマンはシリーズ化中で、
実写化にあたり、共通しているのは、
単なるスーパーヒーローではなく、
“弱さ”や“心の闇”とを表現しようとしているということ。
ハルクもそうですね。
アメコミのヒーローは“強きアメリカの象徴”であるわけですから、
もっと単純に勧善懲悪に徹すればと思いますが、
やはり、その“強さ”も迷走している現代では、
どうしてもこういう造りになるのでしょうか?
その心の闇の表現に捉われすぎて、
作品自体が迷走してしまった代表が、
スパイダーマン。
それでも1作目は観るものがありましたが、
2作目以降は…
そういう迷走を鼻で笑い、
お手本を示してくれたのが今回のバットマン。
バットマン自体に心の闇はありませんが、
そもそも生身の人間というヒーローが、
弱さや脆さを感じさせながら、
悪玉ジョーカーと対するストーリィー展開に…
これほどの、ブレもありません。
ラストの余韻も含め、傑作と認定します。
もう、ヒース・レジャーのジョーカーを
観ることができないのが残念でなりません。
邦画は…雑感で羅列すると、
「運命じゃない人」の内田けんじ監督の新作
「アフタースクール」はかなり期待していましたが、
実力が認められ、集まる制作費とキャストの顔ぶれの
ステージが上がった分、出来は下がってしまいました。
坂本順治監督×藤原竜也のコンビに胸躍らせた
「カメレオン」も…残念。
中でも、よかった作品は、佐藤隆太初主演の「ガチ☆ボーイ」
荒川良々の「全然大丈夫」
加えて、市原隼人君の「ネガティブハッピーチェーンソーエッジ」と
「神様のパズル」は好きな作品です。
※もうひとつの公開作品
「僕達と駐在さんの700日戦争」はダメでした。
12月のレンタル開始作品のタイトルついて…
「隠し砦の3悪人~ラストプリンセス」
個人的には、こういうカテゴリーはとにかく作り続けて欲しいです。
こういう…というのは、歴史モノ娯楽SF作品。
黒澤のリメイク…とふれ込まなければよいのに…
そもそも、隠し砦、舞台になってないし…ロードムービーじゃん。
阿部寛は“この手の”映画よく似合います。
京極シリーズの、榎木津礼二郎や
海堂尊原作の白鳥(チームバチスタ)役などは、
もう彼でなければ、というはまり役をいくとも持つ彼ですが、
なんとか“この手の”映画にも出続けて欲しい。
この映画での役者NO1は、なんといっても
宮川大輔 が素晴らしいです。
シバトラやバチスタでのドラマ出演でも、
なかなかの役者ぶりとは思っていましたが、
この映画で、その存在感は証明されました。
その対照で、長澤まさみと椎名きっぺいさん…
はまずいことになっています。
椎名さん…映画「魍魎の箱(漢字がでない)」
での関口役では見事でしたのに、
隠し砦での悪役…もう、こういうキワ役は、
断ればという感じですね。
男色の武将を演じた、高嶋政宏のアクくらいは
せめて感じさせて欲しかった。
彼が演る意味がなく格を下げるだけです。
長澤は…迷走中です。
確か、初の主演が「ロボコン」
この出来がひどかったのですが、
彼女のせいではなく、
自作の「世界の中心で…」で見事に演じ…
その後、がどんどん尻つぼみです。
倉本ドラマのリストカット少女も
映画「深呼吸の必要」の自閉気味の高校生役も、
「世界の中心で…」の役の印象のせいでの
オファーを受けたことが失敗…
その後もリカバーできすにいます。
アニメ原作の「タッチ」「ラフ」も最低。
これも彼女のせいではなく、映画がひどい。
「涙そうそう」で復活したかに思えましたが、
19歳ギリギリでの主演作「その時は彼によろしく」がまた最悪。
このままだと、どうでもよい娘になってしまいます。
2009年公開の「群青」に期待です。
それで思い出しましたが、
ライバルの沢尻エリカが、映画「クローズドノート」の
舞台挨拶での態度が問題になりましたが、
あれは、あまりに映画を適当に作るスタッフに切れたのが理由らしい…
とのことです。
つまり、自分は真剣に映画作りに参加しているのに、
作品の質にこだわらない姿勢が許せなかったと…
もし本当なら、僕は女優として正しいあり方だと思います。
何故なら、「クローズドノート」の出来が、
いい加減であったとしかいえないものだから。
そのままいいなりにならない…
そういうスタンスでいないと、
よい作品に参加できるのは、
運任せになってしまいます。
長澤が、前述の「そのときは、彼によろしく」の
公開直前インタビューで、
「20歳になる間際の作品が…こんな…いや
この作品でしたが、10代の自分が何を残せたのか
…まだまだですね」
と口にしていました。
同様に凡作であったこの作品、
それを感じていた長澤は、
スタッフに何を言ったのか…言えなかったのか。
「マジックアワー」
…“この手の作品”は、もう三谷さんしか作ってくれません。
お願いです、出資者の企業は、そういうつもりで、
制作費を出してあげてください。
それ以上のコメントはありません。
「山のあなた」
…加瀬亮の演技は最高です。本当によい役者さん。
あと、温泉に行きたくなる。
以上です。
●テレビ ドラマ
今年のNO1は、
明日の喜多善男
これにつきますね。
小日向 文世 さん最高でした。
原作は、文壇の貴公子…異端児?(笑)
島田雅彦の「自由死刑」。
これを「世にも奇妙な…」シリーズの
飯田譲治さんが見事にまとめてくれました。
吉高由里子をついに世に知らしめて
しまった作品でもありました。
月9では、小日向さんと吉高が続けて出演した
「太陽と海の教室」
視聴率は最悪だったらしいですが、
坂元裕二さんの脚本…僕はけっこう好きでした。
この人、東京ラブストーリーやら二十歳の約束やら、
ラストクリスマス…と
書き手としては有名な方で、
中でも、向田邦子賞を受賞した
「わたしたちの教室」の台詞回しは、
見事でした。
月9枠は、とにかく縛りがきつく、
濱田岳と北乃きい以外は、演技もままならない若者を扱い、
自由に実力が発揮できなかったのでしょうが、
それでも、彼の紡ぐ言葉は心に残りました。
僕が印象的だったのは、
責任は、何かが起った後にとるものじゃない!
起る前に取るもんなんだ!
と言う台詞。
出そうで出ない、
なかなかの人生訓だと思います。
●お笑い
ザ・パンチさん
M1グランプリでは、3年連続準決勝止まりだそうです。
パンチという名前では、なかなかピンときませんね。
ボケ担当の、パンチパーマの気持ち悪い姿の相方に
「お願いだから 来世は 人に生まれないでえ~」
と突っ込むあのコンビ…です。
わかりました?
今年の僕は、あのコンビの、あの突っ込みのひと言に、
センスを感じてしまいました。
お気に入りの突っ込みは、
「ホームステイ先で 嫌われてえ~」
なんといっても一番は、
「お願いだから 米送るから 家で 寝ててえ~」
です。
耳にして以来、どうにか使ってやろうと、いつも狙っているのですが、
なかなか使う機会がありません。
「 おまえさあ 頼むから 家で寝てて…米送るから」
嗚呼!
誰かに言いたい。
言いたいと…
こう…喉まで出掛かるのですが…
口に出来ない。
それほどではない…というより、
僕の弱さなのです…たぶん。
◆小説ですが
トム・ロブ・スミス の
「チャイルド44」
久しぶりにキマシタね。
資本主義の自由さの概念では、
このストーリーは出てきません。
やはり、社会主義国家の抑圧された体制下というか、
そもそものイデオロギーの違いがあってはじめて、
この本の根底が生まれている
小難しく言えば、それがこの小説の魅力です。
ロシアものですから、万人はお勧めしませんが、
年末にじっくり大作に挑みたい方は、ぜひ。
ロシアでは発禁処分らしいですが、
各国でベストセラーです。
出来るものなら映画化して欲しい…と思います。
後は、ライムシリーズからスピンアウトした、
ジェフリー・ディーヴァ-の
「スリーピング・ドール」
も面白かった。
このシリーズ 「ボーンコレクター」が
デンゼルワシントン主演で映画化されましたから、
ご存知の方もいらっしゃるかと。
前作の「ウォッチメーカー」が最高の出来ですので、
興味のある方はここからでも楽しめます。
日本の作品は もうこの場でも取り上げましたので 割愛します。
東圭吾さんは…書きすぎ
伊坂さんは…当たり外れありすぎ(笑)。
いまの買いは 道尾秀介 さんです。
◆◆◆
という くだけた感じでお送りしました。
適当に読んで、参考になるところ(ないかもしれませんが)だけ、
つまんでください。
この前、「なんでそう、なんでもかんでも自信をもって
紹介できるのか?」と あるご年配に聞かれました。
なんでもかんでも…
という部分については、
「本当は もっと ひとつに絞って 徹底的に 薦めるか、
そもそも、もっと伝えたいジャンルはいっぱいあるので、
取り上げるテーマ自体、広げたい気持ち
なんだけれど、
見てくれる方が、下は小学生の女の子から
上はおじいちゃんまでいるので、
とっつき易いジャンルで、
しかもあまり詳しく専門的過ぎたりすると…
申し訳なく…結果的に
薄く広くになってしまう」
と応え、自信をもって…の部分については、
「自信があるから」
と応えました。
…どうも、何かを望んでいるようでしたので、
「サブプライム問題に見るアメリカ経済の自己中の実態」とか、
「派遣を切る企業の建前と本音」とか、
「臨床と治療…日本の医療の行方」とか、
「インドネシア人の宗教と生活」とか、
そういうテーマでも、
一通りは書いてかけないことはないのですが…
と格好をつけてみると、
「いやあ…そういう意味ではないんだけど…」
と言うので、
「遠慮しないで、せっかく見てくれるなら…
何かお題をください」
と言うと、
「大病を患っている知人へ お見舞いするときに
気をつけること …ってのはどうか?」
とシュールなことをおっしゃるので、
「僕に限ってなら書けますが、一般的には、
類推の粋を出ないし、
やはり、デリケートな問題だから…難しいですね」
などと、応え、さらに
「個人的に、ほんとうにそういうケースで悩んでいるなら…
相談にのりますが」と突っ込むと、
実は、大学の同期がスキルス性の癌で先週入院した…と。
毎週のようにゴルフに行っていた友人なので、
病院で会う勇気が湧いてこない。
早く駆けつけたいんだけど、
…行ってどうしたらいいのか…と。
「その方の性格はわかっていらっしゃいますかよね?」
「そりゃあもう50年も付き合っているから…」
「じゃあ…その方が病気をどう受け入れているか、
イメージできますか?」
「できる…独りで悩んでも、家族や友人には見せない…
で頑張るタイプ」
「なるほど…結果的には、行っても行かなくても
向こうは あなたの気持ちわかってますよ。
もし、向こうの気持ちを考えての二の足なら、
踏まないほうがよいですよ。
あとは、自分が自分にどうしたいか?
…行かないで、亡くなったら後悔しますよね。
だったら、乗り越えること。
それだけですよ。
行ってどうしよう…なんて、
相手の顔見て考えればいいんです。」
と応えました。
この会話から1週間たちますが、
自分のコメントを後悔しています。
やはり、デリケートな問題は
ほんとは、簡単にアドバイスなんてしてはいけなかった…と。
その後、そのご年配が、
実際お見舞いに行かれたのかは知りませんが、
自分の基準で喋ってもよいことには、範囲があると。
そう思った次第でした。
こんなことも、今年、人との関わりの中で、
自分自身が感じた センスのひとつでした。
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