紋谷のソコヂカラ

知らずに死ねるか Vol,8 [知らずに死ねるか!]

投稿日時:2008/11/05(水) 14:32

~ 思い出の映画はなんですか? ~
 
 
学校の体育館で「映画」を観た思い出はありますか。
秋の文化祭の学校行事のひとつ。
僕は、中学と高校の2度の思い出があります。
 
高校時代は、生徒会主催の任意参加のプログラムのひとつでしたが、
中学の鑑賞会は、学校側の主催。
全校生徒集められて、体育座りでの鑑賞でした。
 
「もんやあ~今度の文化祭…映画上映するんだけど…なにがええ?
 こんなかから選んでくれんかなあ~」
 
と、中学の担任の先生から頼まれた僕は、
業者からもらったリストを渡され、困った思い出があります。

自分が観たい作品ならどうとでもなるのですが、
全校生徒と先生が鑑賞するとなると、趣味で選ぶというわけにはいきません。
 
また、そのリストなんですが、いわゆる“文部省”が認定やら推奨やらしているものばかりで、そもそも、面白くない。
ちなみに、当時は昭和50年。
劇場では、百恵&友和とブルースリーが人気を二分していた時代。
 
「初江!飛んで来い!」と「アチャア~!!」を求めて、
みんなが映画館に押し寄せていた頃です、
そこに、文部省認定では、どうも気が利かない。
 
「先生。無理です」
 
と一度は、断りに行ったのですが、
 
「まあ、そういわないで、頼むわ。ちなみに先生は吉永小百合が好きだなあ~」
と押し付けられてしまいました。
 

僕なりの責任感で、悩んだ末に選んだ映画は2つ…
 
「戦艦ポチョムキン」と「キューポラのある町」
 
ポチョムキンは「1次大戦下、上官が兵士に“蛆を食え”と
強要することで起る、船の上での兵士たちの氾濫を描いた
ロシアのモノクロ作品。
同じ、戦争モノでも、アメリカ活劇系を選びたかったのですが…
リストにはなく。
 キューポラは ご存知、サユリスト垂涎の初期作品。
 
「なるほど…わかった。あとは職員会議で決めるわ」
 
となり、結局…ポチョムキンが上映されることになったのですが、
これが、まあ大失敗。
 
テーマも映像も暗すぎて、全校生徒相手の上映会にはまったくそぐわない。
上映後に、感想文を書かされるのですが、後で聞いたら、

「蛆を食わせる上官はひどい!」
「乳母車が落ちるシーンは残酷すぎる」
「なんで、この映画を上映したのか意味不明」…
 
などなど、生徒からは、文句の嵐だったそうでした。
 担任の先生は
 
「オレはキューポラを押したんだけど、歴史の先生がなあ~」
 
などと、フォーローにもならない慰めを頂きました。
数年前に中学の同窓会で、この映画の話になり、
 
「実は、オレが決めたんだよね」
 
というと、

「あれから、戦争映画が嫌いになった」だの、
「帰って、あの蛆のシーンを思い出し、メシが食えなかったんだよな」だの、
 
四半世紀をすぎてなお、文句を言いいたくなるほどの
インパクトだったのかと、改めて思い知り、
子供の心はいろいろ焼きつくものだと、へんに感心したりもしました。
 
高校に2年の頃、また文化祭の前。
校内放送で呼ばれ、生徒会室にゆくと、
 
「おまえ、映画詳しいだろう…今度の文化祭で上映作品決めるんだけど、
オブザーバーで参加してや」
 
と1年先輩の生徒会長のことば。
今度の相手は、上級生といえど、同じ生徒。
これはハナから断ろうと、
 
「クラブの出しものと委員会の出し物で忙しいから、無理です」と。
 
ちなみに、クラブはテニス。出し物は
 
「好き!好き!好き!藤堂さん!ひろみは今日も負けないわ」
 
男女で参加、ダブルストーナメント。
これは、事前にチラシまで作って配布したところ、
1日じゃ終わらない組合わせ数となり…大盛況。
 
委員会は、放送部主催の“イントロ当てクイズ”
当時の、洋楽のヒットナンバーをかき集めて音楽室で一日中開催。
両方とも、企画した責任があり、実行委員長をしていたので、
ほんとうに時間はなかったのです。
 
「明日の放課後に決めるから、とりあえず、
このリスト見てアドバイスくれるだけでもいいから」
 
でたあ!!リスト!
 
それでも、断ろうとすると、今度は副会長が…
 
「おねがい…わたしたちだけじゃ…決められないの」
 
ときた。…結局、引き受けることになったのは、
この副会長が僕の憧れの君…だったという…まあそういうことで。
この判断基準に間違いはない…曇りはよこしまでも、抗うすべはない。
 
さて、高校時代は、角川映画とハリウッド映画全盛。
 
「ママぁ~僕の麦藁帽子…キスミー!」と「フォースの力のあらんことを」
 
で沸き立っていた映画最盛期。
 
しかしその晩、家に帰り、渡されたリストを見ると、
やはり、あいも変わらず…認定と推奨の作品群。
 
…ああ!またもや…と悩んでいると、
我が家に電話が…相手は…あの副会長
 
「あのね。文化祭には県の教育委員会の方もいらっしゃるらしいの。
だからね。あんまり過激なものはダメだと思うのよ…」
 
用件だけの電話とはいえ、舞い上がる僕…その晩は遅くまで、
このリストと格闘することに。
今のようにネットでの検索ができなくても、
映画に関する書籍は豊富でした。
 
といあえず、高校生にふさわしい感じで…
蛆はでてこなくて、乳母車が落ちなくて、氾濫もなしで…
見終わった感動を… 
スクリーンが暗転して、僕に、駆け寄る副会長…
 
「よかったわ…あなたに頼んでよかった」
 
見詰め合うふたり… ぼくの健全なよこしまパワー…
 
翌日の放課後…生徒会室…みながそれぞれに選んだ映画を、
その理由も交え発表、ああじゃこうじゃと言い合いながら、
最後は決に。
 
残った2作品は
 
「スケアクロウ」とまたもや「キューポラのある町」
 
ちなみに、事前に僕が選んでおいた作品は
 
「イージーライダー」と「誰が為に鐘は鳴る」
それに「哀愁」と「我等の生涯の最良の年」
 
どうして、こうなったかというと、
僕はあくまでもオブザーバーだということ、
加えて、僕の挙げた作品を生徒会役員誰もが知らないということ、
加えて、生徒会担当の先生が、
またもや吉永小百合ファンであったということ。
 
このまことにお茶目ないくつかの理由で…
僕の、ほとんど徹夜の夜は意味をなくしてしまいました。
まったく、やる気をなくしている僕に、
 
「もんや君は、どっとちがいいと思う」
 
と副会長の優しい投げかけ、
 
「こういう時は キューポラでしょう」
「こういう時って?」
「いやあ、経験上、ですかね」
 
…結局…上映は「スケアクロウ」になりました。
 
負け惜しみではありませんが、
僕もスケアクロウは大好きな映画です。
ジーンハックマンとアルパチーノのロードムーヴィで、
アメリカンニューシネマが終わらんとする、
最後の時代の傑作だと思います。
 
こちらの上映後の評判は、可もなく不可もなく…だったそうです。
 
まあ、とにかく…文化祭の上映会には縁のない僕でしたが、
思い出には残っているそんな話でした。
 
 
 
そういえば吉永小百合の新作が公開になるそうで。
 
吉永小百合は…なんというか、女優さんという枠を超えた、
ひとつの日本文化のカテゴリーです。
やはり日本人なら観ておかなきゃならない域にあるというか、
そういう女性です。
 
出演作も数多く、ファンの数も膨大…
論じられた機会もいまさら語る余地はないほどですから、
簡単に、取り上げることはしてはならず、
とてもデリケートな位置にいる女優さんでもあります。
 
僕は、彼女の100を越える出演作の半分くらいにしか、
目を通していませんから、
あくまで、その範囲内でのお勧め、僕が面白いと感じたというだけの範囲で…
 
 
◆◆◆
 
「愛と死をみつめて」

日活時代の初期作品としては、やはりこれは外せません。
 
ストーリーは言わずもがなですが、なんと言っても、
小百合さん全編…顔が包帯に包まれていてもなおの美しさは、感動します。
正確には、顔の全部が登場するのは初めだけ、
あとは、片目に眼帯~顔半分に包帯~最後は右目と口半分以外は包帯~と
そのほとんどが包帯に巻かれての演技です。
 
特に後半、顔半分の包帯部分を病室のカーテンに隠し、
こちらに顔を向けるシーンなどは、モノクロなのに、総天然色か!と
ドキドキするほどの神々しい美しさ。
 
実際、いま思い出しても、この映画…カラーだったかな?
という記憶なのです。
 
相手役の浜田光夫の好演もよく、どんどん引き込まれてゆく、
純愛映画の傑作です。
小百合さんの関西弁や当時の大阪の感じも伺えて、
いろいろ勉強になる映画でした。
 
「泥だらけの純情」
 
この小百合はお嬢様ながら…強い女。
またまた、浜田光夫を一途に想う女。
チンピラと道ならぬ恋のお話し。
 僕は後半、逃避行中の会話が好きです。
 
「英語って…何語か知っている?」
「ザ・ピーナッツは、何語でしょう?」
 
などと、駄洒落のクイズで恋人を励ます小百合、
なかなか見られない光景でした。
 
「天国の駅」
 
好きですね。この映画。自慰行為や濡れ場も多く、
世のサユリスト震撼させた、中期後半の作品です。
中村かつおと津川雅彦が…小百合さんとの濡れ場に
狂喜乱舞してやる気を出したというお話しです。
 
実際、2人の夫を殺害し死刑となった女性の実話をもとにしていますから、
今までの小百合さんにはなかっつた情念
(それでも抑えた感じ)を演じています。
 
彼女を慕い、守らんとするのが…若かりし西田敏行…
もう「容疑者X…」が裸足で逃げ出す“献身”ぶりは、すごいです。
確か、四万温泉と箱根登山鉄道のロケでの…温泉場が部隊、
秋の紅葉もさることながら、雪の中を馬に揺られる小百合さんの花嫁姿…
川にかかる赤い橋のシーンの空撮は、見事です。
 
 
「夢千代日記」

これも温泉場が舞台。映画では兵庫県の「湯村温泉」…
小百合さんは置屋の女将です。
母親の胎内で“ピカ”を受けたせいで、
余命のない女の生き様を清らかに演じます。
 
これは、NHKのドラマや舞台と、
もう小百合さんのライフワークとも言える作品となってしまいました。
実際、ドラマの評判の方がぜんぜん良いのですが、
それは尺の問題でもあります。
 
死の間際の、つかの間の逢瀬…北大路欣也の腕に抱かれ、
女を取り戻す小百合さんが秀逸。
 
余談ですが、この映画では、余部の鉄橋(山陰本線)が
印象的に使われていて、いつか訪れてみたいと願っていましたが…
コンクリートの橋に付け替える工事が…
確か今年から始まったらしく、どんな姿になるのやらと心配しています。
 
 
「時雨の記」

小百合さんの最近モノでは、1番です。不倫~純愛…
こういうことならありなのか…と心に染みる話しです。
そりゃあ…いくなあ…渡哲也という感じ。
男のあこがれなのかもしれませんこのパターン。
 
ネタばれにしたいところですが、止めます。
観たほうが早いし観ないとわからない。
 
 
◆◆◆
 
 
思い出の映画の話をするところを、
吉永小百合さんのお勧めになってしまったのは、
中学と高校の先生のせいです。
 
ともに、キューポラというところが、先生ぽくて…笑えます。
「青い山脈」にしないところも…
今となっては、なんとなくわかる気がします。

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