紋谷のソコヂカラ
知らずに死ねるか VOL.2 [知らずに死ねるか!]
投稿日時:2008/08/10(日) 16:27
「盆休みは家族でどっか行くの?」
「…うん…嫁さんは、明日から子供連れて実家帰る」
「おまえは行かないの?」
「行かない…仕事だし」
「んっ?…休みないの?」
「いや…あるよ」
「だったら行けば。嫁さん実家どこだっけ…長野…小諸かぁ…
小諸なる古城のほとりよぉ…かぁ」
「………」
「なに?」
「…冷静になって考えたい…って」
「…はぁ~?…あらっ(笑)…あっ、あれかぁ~」
「…そう」
「ばれたぁ?」
「ばれた」
「錦糸町だっけ?…キャバクラ…マリちゃん…どうしてバレた?」
「…箱根の温泉」
「行ったの?」
「うん」
「うんじゃないよ、うんじゃ…なんでバレたの?」
「大阪出張ってことにしてね…‥」
「それで…」
「おみやげ買って帰ったの。…それでバレた」
「なに買ったの?」
「わさび饅頭」
「はぃ!?…なんで大阪で、わさび饅頭なんだよ」
「…新幹線で買ったことにしたんだよ」
「それで?」
「子供がさ…包み紙開けたら…出てきたんだよ」
「…何が?」
「旅館のパンフレット」
「……??」
「ママ~これなぁに?って…」
「子供が?」
「子供が」
「ごまかせない?」
「またのお越しをお待ち申し上げておりますって、女将さん直筆の付箋が付いてて…」
「……!…マリちゃん?」
「たぶん」
「だから…盆休みさぁ暇なんだよね…なんか面白いDVDとかない?」
「なんでお見舞いに来て…そんななの、お前は。…許してもらいに行けよ」
「向こうは親戚中いるんだぜ…とりあえず無理」
「…はぁ?…無理って?…仕方ないじゃん!…それに待ってるよ…たぶん」
「そんなんことないよ」
「“信州信濃の新そばよりも、あたしゃあなたのそばがよい”ってね」
「なにそれ、昔のジョーク?」
「相変わらずモノ知らないねおまえは…、でもこの場合、冷静になられたら恐いよ」
「そうかなぁ…」
「冷静…は恐い…マジで」
「お前…癌の癖に…どうして、そういうことわかるの?」
「お前こそ、癌でもないのに、どうしてそんなに馬鹿なの」
「…へへへ…生まれつきだよ」
「…生まれつきかぁ…‥じゃあ仕方ないね…っておい!…20年くらい寄越せ!…お前の人生!」
◆◆◆ 「立川志の輔の落語」 ◆◆◆
夏は落語と紹介するわけではありません。志の輔は…どんな時でも聴いていたい、
聴いて欲しい噺の達人です。もちろん寄席に行って生で観て、聴くのが一番なのですが…
落語協会を脱退している談志一門、そう簡単にはお目にかかれません。
中でもパルコ劇場を1ヶ月貸し切り行われる「志の輔落語」などは、1万2000席が、
即日売り切れます。ここでの演目のメインは、志の輔オリジナルの“創作落語”。
まぁ…これが…凄い!! 。
笑って…笑って…また笑って…じ~んっときて…手に汗握って…また笑って…
それで最後にぐわわぁ~んと感動が押し寄せる。
古典好きな僕は、今まで「創作落語」は敬遠していました。
若手がいかにも“現代の笑いを” とおもねる感じがたまらなく嫌で。
またこれがつまらない。
古典をちゃん聴かせられないで…「下手な今風で誤魔化すな」と(笑) 。
だから、志の輔の創作落語の評判を耳にした時も…あれだけ上手い人が…
何故に創作?と思いました。
…その後に、録画頂いたパルコ劇場の独演会を観て…その完成度の高さにびっくりです。
たぶん思うのですが…もう、彼の中では古典だけでは物足りないのでしょう。
もっとお客さんを楽しませたい。
もっともっと…と追求したその先が“創作落語”だったのでしょう。
志の輔落語は、落語を知らない方も大丈夫…というか、
聴いたことのない人にこそ、聴いて欲しい、観て欲しい。
ある噺の枕で、志の輔は言います。
「人間、怒ったり泣いたりするタイミングは、99%おんなじ。
でも、笑いだけは違う。ひとそれぞれ。だからこの商売難しいんです」 と…。
志の輔落語は、その笑いのタイミングが100%揃ってしまう…
そういう極上のエンタテイメントです。
※ここに紹介するのは、パルコ劇場の作品で
DVD化(映像)しているものだけにします。
●「歓喜の歌」
昨年、小林薫で、映画化されたので、ご存知の方もいるかも。
まだ観ていない方は、映画ではなく、志の輔のオリジナル落語を観てください。
舞台は年の瀬もおしせまった30日…とある町の文化会館。
主任さんと部下の2人が、大晦日のホールの予約をダブルブッキングしていることに気がつくところから始まります。予約は“名前の似ている2つのママさんコーラス”。
はじめは、ママさんコーラスと馬鹿にしていた主任さんでしたが、彼女たちが、コーラスに打ち込んできたその真剣さにを知るにつれて…だんだんと気持ちが変わってきます。
志の輔は、この、どこにでもいる“小役人”の心の変化を絶妙に演じます。
●「ガラガラ」
正月の商店街の福引会場。「1等!豪華客船世界一周の旅。ペアでプレゼント」
この1等をなんと“7本”も入れてしまったことで始まる大騒ぎ。
なぜ7本も入れてしまったのか?2等以下はどうなんだ?1等は何本でるのか?…そして商店街の将来は? お話しは、商店街の会長や福引に来たお客さん達を巻き込み、おもしろおかしく、高速展開してゆきます。
●「メルシーひな祭り」
地方の商店街を舞台に職人が作る雛人形を求めてフランス特使夫人とその娘が商店街の人々と繰り広げる人情喜劇。
ひな飾りがお目当てのフランス特使夫人とその娘が、人形職人を訪ねて地方の商店街へ。しかし、その職人の専門が“人形の頭だけ”だとわかり、同行していた外務省の役人は大慌て。みかねた商店街の人々は、日本の思い出になんとかひな飾りを見せてやろうと一致協力するのですが、やがて事態は思わぬ結末へ…。
※ほんとうは、他にも紹介したい作品がたくさんあるのですが、映像付はなにせ手に入らない。
僕がいちばん好きな噺は、「中村仲蔵」、WOWOWで以前のパルコ劇場での公演を放送してくれていまして、この録画をダビングしてもらいますので、ご希望の方はいつかお貸しします。
ただ、“映像なしの音声だけ”のDVDなら他にもいくつも手に入ります。
「しじみ売り」などの人情噺は、もう“絵”が目に浮かびます。
現代創作モノですと「みどりの窓口」「はんどたおる」などは、もう抱腹絶倒の連続。
映像はなくとも、志の輔の天才ぶりを充分に堪能できます。
※上記3本がセットになったDVDをここから買えます。
(このDVD購入はMON:Uとは関係ありませんので、あしからず・・・)
◆◆◆ ◆◆◆
「おっ!…面白ろそうじゃん!…志の輔かあ…」
「お前はいいの。早く、奥さんところ行けよ!」
「…帰ったら…いっしょに観ようかと…」
「…じゃあこうしろ!まずは車で迎えにゆく」
「迎えに?」
「そう。土下座でもなんでもして、とにかく、車に乗せろ」
「はあ。」
「それで、志の輔の落語を車で聴かせる…そうだなあ…“みどりの窓口”…あたりか
ら…
中央高速を走っている間中…ずうっと志の輔落語…」
「…それでどうなる」
「家に着いている頃には、少なくとも、話しは聞いてくれる位に、怒りは収まってい
るはずだよ」
「そんな簡単にいかないよ」
「いくから絶対。俺を信じて、っていうか、志の輔を信じて。」
「…わかった やってみる」
「ただ、ひとつ注意しておく」
「なに?」
「面白すぎて お前がゲラゲラ笑わないように。事前に一通り聴いておくこと」
「了解」
「…うん…嫁さんは、明日から子供連れて実家帰る」
「おまえは行かないの?」
「行かない…仕事だし」
「んっ?…休みないの?」
「いや…あるよ」
「だったら行けば。嫁さん実家どこだっけ…長野…小諸かぁ…
小諸なる古城のほとりよぉ…かぁ」
「………」
「なに?」
「…冷静になって考えたい…って」
「…はぁ~?…あらっ(笑)…あっ、あれかぁ~」
「…そう」
「ばれたぁ?」
「ばれた」
「錦糸町だっけ?…キャバクラ…マリちゃん…どうしてバレた?」
「…箱根の温泉」
「行ったの?」
「うん」
「うんじゃないよ、うんじゃ…なんでバレたの?」
「大阪出張ってことにしてね…‥」
「それで…」
「おみやげ買って帰ったの。…それでバレた」
「なに買ったの?」
「わさび饅頭」
「はぃ!?…なんで大阪で、わさび饅頭なんだよ」
「…新幹線で買ったことにしたんだよ」
「それで?」
「子供がさ…包み紙開けたら…出てきたんだよ」
「…何が?」
「旅館のパンフレット」
「……??」
「ママ~これなぁに?って…」
「子供が?」
「子供が」
「ごまかせない?」
「またのお越しをお待ち申し上げておりますって、女将さん直筆の付箋が付いてて…」
「……!…マリちゃん?」
「たぶん」
「だから…盆休みさぁ暇なんだよね…なんか面白いDVDとかない?」
「なんでお見舞いに来て…そんななの、お前は。…許してもらいに行けよ」
「向こうは親戚中いるんだぜ…とりあえず無理」
「…はぁ?…無理って?…仕方ないじゃん!…それに待ってるよ…たぶん」
「そんなんことないよ」
「“信州信濃の新そばよりも、あたしゃあなたのそばがよい”ってね」
「なにそれ、昔のジョーク?」
「相変わらずモノ知らないねおまえは…、でもこの場合、冷静になられたら恐いよ」
「そうかなぁ…」
「冷静…は恐い…マジで」
「お前…癌の癖に…どうして、そういうことわかるの?」
「お前こそ、癌でもないのに、どうしてそんなに馬鹿なの」
「…へへへ…生まれつきだよ」
「…生まれつきかぁ…‥じゃあ仕方ないね…っておい!…20年くらい寄越せ!…お前の人生!」
◆◆◆ 「立川志の輔の落語」 ◆◆◆
夏は落語と紹介するわけではありません。志の輔は…どんな時でも聴いていたい、
聴いて欲しい噺の達人です。もちろん寄席に行って生で観て、聴くのが一番なのですが…
落語協会を脱退している談志一門、そう簡単にはお目にかかれません。
中でもパルコ劇場を1ヶ月貸し切り行われる「志の輔落語」などは、1万2000席が、
即日売り切れます。ここでの演目のメインは、志の輔オリジナルの“創作落語”。
まぁ…これが…凄い!! 。
笑って…笑って…また笑って…じ~んっときて…手に汗握って…また笑って…
それで最後にぐわわぁ~んと感動が押し寄せる。
古典好きな僕は、今まで「創作落語」は敬遠していました。
若手がいかにも“現代の笑いを” とおもねる感じがたまらなく嫌で。
またこれがつまらない。
古典をちゃん聴かせられないで…「下手な今風で誤魔化すな」と(笑) 。
だから、志の輔の創作落語の評判を耳にした時も…あれだけ上手い人が…
何故に創作?と思いました。
…その後に、録画頂いたパルコ劇場の独演会を観て…その完成度の高さにびっくりです。
たぶん思うのですが…もう、彼の中では古典だけでは物足りないのでしょう。
もっとお客さんを楽しませたい。
もっともっと…と追求したその先が“創作落語”だったのでしょう。
志の輔落語は、落語を知らない方も大丈夫…というか、
聴いたことのない人にこそ、聴いて欲しい、観て欲しい。
ある噺の枕で、志の輔は言います。
「人間、怒ったり泣いたりするタイミングは、99%おんなじ。
でも、笑いだけは違う。ひとそれぞれ。だからこの商売難しいんです」 と…。
志の輔落語は、その笑いのタイミングが100%揃ってしまう…
そういう極上のエンタテイメントです。
※ここに紹介するのは、パルコ劇場の作品で
DVD化(映像)しているものだけにします。
●「歓喜の歌」
昨年、小林薫で、映画化されたので、ご存知の方もいるかも。
まだ観ていない方は、映画ではなく、志の輔のオリジナル落語を観てください。
舞台は年の瀬もおしせまった30日…とある町の文化会館。
主任さんと部下の2人が、大晦日のホールの予約をダブルブッキングしていることに気がつくところから始まります。予約は“名前の似ている2つのママさんコーラス”。
はじめは、ママさんコーラスと馬鹿にしていた主任さんでしたが、彼女たちが、コーラスに打ち込んできたその真剣さにを知るにつれて…だんだんと気持ちが変わってきます。
志の輔は、この、どこにでもいる“小役人”の心の変化を絶妙に演じます。
●「ガラガラ」
正月の商店街の福引会場。「1等!豪華客船世界一周の旅。ペアでプレゼント」
この1等をなんと“7本”も入れてしまったことで始まる大騒ぎ。
なぜ7本も入れてしまったのか?2等以下はどうなんだ?1等は何本でるのか?…そして商店街の将来は? お話しは、商店街の会長や福引に来たお客さん達を巻き込み、おもしろおかしく、高速展開してゆきます。
●「メルシーひな祭り」
地方の商店街を舞台に職人が作る雛人形を求めてフランス特使夫人とその娘が商店街の人々と繰り広げる人情喜劇。
ひな飾りがお目当てのフランス特使夫人とその娘が、人形職人を訪ねて地方の商店街へ。しかし、その職人の専門が“人形の頭だけ”だとわかり、同行していた外務省の役人は大慌て。みかねた商店街の人々は、日本の思い出になんとかひな飾りを見せてやろうと一致協力するのですが、やがて事態は思わぬ結末へ…。
※ほんとうは、他にも紹介したい作品がたくさんあるのですが、映像付はなにせ手に入らない。
僕がいちばん好きな噺は、「中村仲蔵」、WOWOWで以前のパルコ劇場での公演を放送してくれていまして、この録画をダビングしてもらいますので、ご希望の方はいつかお貸しします。
ただ、“映像なしの音声だけ”のDVDなら他にもいくつも手に入ります。
「しじみ売り」などの人情噺は、もう“絵”が目に浮かびます。
現代創作モノですと「みどりの窓口」「はんどたおる」などは、もう抱腹絶倒の連続。
映像はなくとも、志の輔の天才ぶりを充分に堪能できます。
※上記3本がセットになったDVDをここから買えます。
(このDVD購入はMON:Uとは関係ありませんので、あしからず・・・)
◆◆◆ ◆◆◆
「おっ!…面白ろそうじゃん!…志の輔かあ…」
「お前はいいの。早く、奥さんところ行けよ!」
「…帰ったら…いっしょに観ようかと…」
「…じゃあこうしろ!まずは車で迎えにゆく」
「迎えに?」
「そう。土下座でもなんでもして、とにかく、車に乗せろ」
「はあ。」
「それで、志の輔の落語を車で聴かせる…そうだなあ…“みどりの窓口”…あたりか
ら…
中央高速を走っている間中…ずうっと志の輔落語…」
「…それでどうなる」
「家に着いている頃には、少なくとも、話しは聞いてくれる位に、怒りは収まってい
るはずだよ」
「そんな簡単にいかないよ」
「いくから絶対。俺を信じて、っていうか、志の輔を信じて。」
「…わかった やってみる」
「ただ、ひとつ注意しておく」
「なに?」
「面白すぎて お前がゲラゲラ笑わないように。事前に一通り聴いておくこと」
「了解」
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