紋谷のソコヂカラ
しょこたん先生 [病気について]
投稿日時:2008/07/29(火) 09:06
しょこたん先生はいつも、音もなく現れる。
気づくとベットの脇に立っていて、「おかわりないですか?」とくる。
「ありませんよ」と応えると、「そうですか」と応え…そのまま佇んでいる。
…特に何かを語るでもなさそうで…口元にわずかに笑みをたたえ、じっとこちらを見ている。
そのまま無言で向かい合うのもなんなので、
「2回目の投薬、量を増やされるんでしょ…怖いですね」
などと振ってみると、
「…そうですね…今回の結果を受けて決めますから…」
とひとこと。
「はいわかりました」…
「ではまた」
僕のケース、医者の側から見てみると、ひとつ、新しい抗がん剤が効くのか否か、ふたつ、副作用の程度に問題はないか否か、後者は前者のためにチェックされる。つまり“決められた量を決められたサイクルで投薬する”ことが重要な抗がん剤治療の場合、副作用の程度によっては治療を断念したり、サイクルを変えなければならなくなってしまうからだ。
逆に言えば、いったん投薬をしてしまい、その後副作用に問題なければ、次の投薬までそれほどナーバスになることもない。
僕も、勝負は“効くのか効かないのか”の一点、ここに気持ちの全部を持ってゆく。それ以前の副作用がどんなに酷くとも、通過儀礼でしかないと頭と体で感じている。
だから、グチのひとつ、悩みのひとつ、言うわけでなし。しょこたん先生が、様子を伺いにいらしても、患者らしからぬ態度に映っているのかもしれない。
こんな鈍感でふてぶてしい僕は別にして、癌と宣告され、化学療法を受けている多くの患者さんにとって、治療と治療の間は心が揺れる。開き直っていたつもりでも…怖い…強くありたいと願っても…不安は襲う。
だから、病室に回診に来てくれた折の先生の言葉は、魔法のコトバだ。
決して「だいじょうぶですよ」とは言わない、よいところ「がんばりましょう」だ。それでも先生のひとことひとことに患者は救われる、毎日お見舞いに来てくれる奥さんに甘え倒し、わがまま言い放題のオヤジさんも、先生に対しては神妙な顔で、その魔法のひとことを聞き漏らすまいと、ベットの上で正座する。
お医者さんも大変だ。明らかに気持ちが落ちている患者さんなどに、
「だいじょうぶですよ」と声をかけてあげたい。でもそれは出来ないこと。
その代わり、患者さんが感じる悩みや体調の変化ひとつひとつに耳を傾け、丁寧に応えてゆく。
しょこたん先生はそんな先生だ。
何度か見聞きして気づいたことですが、彼女は、患者さんのどんな質問にも、正確にそして誠実に応えようとしている
感情を露わにせず、余計な気づかいもせず…ただプロとして相対している。
しょこたん先生は、大学病院での、前期研修医期間を経て、この病院にやってきた。泌尿器科はご本人の希望。なぜと伺うと…少し考え“手術があるから”…と答えた。
患者を治す行為に“手術”という直接的なスキルで対処できることが魅力だったらしい。
「充実感はありますか?」
「まだまだ追われていて…そこまでの余裕はないですね」
「患者さんがみんな癌ということに抵抗はありますか?」
「いえ…特に…」
「その誠実さは昔から?」
「う~んどうでしょう」
「趣味はなんですか?」
「…ギター」
「ロックですか?」
「軽音です」
「コピー?」
「友達はジュディマリとか」
「先生は?」
「…スピッツ」
「今も弾くんですか?」
「いえ…時間もないし」
先生、申し送り前の貴重なお時間をすいません。これからもそんな調子で…お願いします。
ちなみにこのプチ取材はこんな質問から始まった。
「先生…しょこたんに似てるっていわれませんか?」
「…えっ!?……そんな!……‥言われたことは…あります」
※ブログへの掲載は、一応、ご本人の快諾を得ていますが、実際にご覧になり、気分を害されるかもしれません(笑)。その場合は速やかに削除致しますのであしからず。また、お見舞いにいらした際、しょこたん先生をお見かけしても、「しょこたん先生!」などと気軽に声をかけないようにお願いします。僕の大切な主治医のおひとりですから
気づくとベットの脇に立っていて、「おかわりないですか?」とくる。
「ありませんよ」と応えると、「そうですか」と応え…そのまま佇んでいる。
…特に何かを語るでもなさそうで…口元にわずかに笑みをたたえ、じっとこちらを見ている。
そのまま無言で向かい合うのもなんなので、
「2回目の投薬、量を増やされるんでしょ…怖いですね」
などと振ってみると、
「…そうですね…今回の結果を受けて決めますから…」
とひとこと。
「はいわかりました」…
「ではまた」
僕のケース、医者の側から見てみると、ひとつ、新しい抗がん剤が効くのか否か、ふたつ、副作用の程度に問題はないか否か、後者は前者のためにチェックされる。つまり“決められた量を決められたサイクルで投薬する”ことが重要な抗がん剤治療の場合、副作用の程度によっては治療を断念したり、サイクルを変えなければならなくなってしまうからだ。
逆に言えば、いったん投薬をしてしまい、その後副作用に問題なければ、次の投薬までそれほどナーバスになることもない。
僕も、勝負は“効くのか効かないのか”の一点、ここに気持ちの全部を持ってゆく。それ以前の副作用がどんなに酷くとも、通過儀礼でしかないと頭と体で感じている。
だから、グチのひとつ、悩みのひとつ、言うわけでなし。しょこたん先生が、様子を伺いにいらしても、患者らしからぬ態度に映っているのかもしれない。
こんな鈍感でふてぶてしい僕は別にして、癌と宣告され、化学療法を受けている多くの患者さんにとって、治療と治療の間は心が揺れる。開き直っていたつもりでも…怖い…強くありたいと願っても…不安は襲う。
だから、病室に回診に来てくれた折の先生の言葉は、魔法のコトバだ。
決して「だいじょうぶですよ」とは言わない、よいところ「がんばりましょう」だ。それでも先生のひとことひとことに患者は救われる、毎日お見舞いに来てくれる奥さんに甘え倒し、わがまま言い放題のオヤジさんも、先生に対しては神妙な顔で、その魔法のひとことを聞き漏らすまいと、ベットの上で正座する。
お医者さんも大変だ。明らかに気持ちが落ちている患者さんなどに、
「だいじょうぶですよ」と声をかけてあげたい。でもそれは出来ないこと。
その代わり、患者さんが感じる悩みや体調の変化ひとつひとつに耳を傾け、丁寧に応えてゆく。
しょこたん先生はそんな先生だ。
何度か見聞きして気づいたことですが、彼女は、患者さんのどんな質問にも、正確にそして誠実に応えようとしている
感情を露わにせず、余計な気づかいもせず…ただプロとして相対している。
しょこたん先生は、大学病院での、前期研修医期間を経て、この病院にやってきた。泌尿器科はご本人の希望。なぜと伺うと…少し考え“手術があるから”…と答えた。
患者を治す行為に“手術”という直接的なスキルで対処できることが魅力だったらしい。
「充実感はありますか?」
「まだまだ追われていて…そこまでの余裕はないですね」
「患者さんがみんな癌ということに抵抗はありますか?」
「いえ…特に…」
「その誠実さは昔から?」
「う~んどうでしょう」
「趣味はなんですか?」
「…ギター」
「ロックですか?」
「軽音です」
「コピー?」
「友達はジュディマリとか」
「先生は?」
「…スピッツ」
「今も弾くんですか?」
「いえ…時間もないし」
先生、申し送り前の貴重なお時間をすいません。これからもそんな調子で…お願いします。
ちなみにこのプチ取材はこんな質問から始まった。
「先生…しょこたんに似てるっていわれませんか?」
「…えっ!?……そんな!……‥言われたことは…あります」
※ブログへの掲載は、一応、ご本人の快諾を得ていますが、実際にご覧になり、気分を害されるかもしれません(笑)。その場合は速やかに削除致しますのであしからず。また、お見舞いにいらした際、しょこたん先生をお見かけしても、「しょこたん先生!」などと気軽に声をかけないようにお願いします。僕の大切な主治医のおひとりですから
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