紋谷のソコヂカラ

松村の奥さんからのメール [見舞百景]

投稿日時:2008/07/24(木) 21:38

昨年、再発の告知を受けてから、
松村のことを何度も思い出します。田中あっこのことも川原のこともダテジュンのことも…浜松の叔母さんのことも。ほんとうに物心ついてからの親友だった中川節夫のことも。
人は誰かの死をいつか忘れてしまう。それは、忘れないとその悲しみがたまって押しつぶされてしまうから…らしい。

お盆には必ず帰省します。若い頃は煩わしいと感じていましたが、今では年に1度は原風景に還るのが楽しみとなっています。静岡県の西、周智郡森町、茶畑と田んぼ、山と川しかない田舎です。浅田次郎さんの短編小説「うらぼんえ」の映像化の際にロケ地に使われたりしました。

「正月はいいから盆には帰れ」東京生まれの友人にこんな話をしてもピンとこないらしいのですが、先祖を守る風習が身に染み込み“お墓”のある菩提寺を奉ることを役目と尊ぶのは、ウチの田舎に限らない話でしょう。
ここ1年のうちに“不幸”のあった家を「初盆」と言い、盆の3日間、外では松明を焚き、座敷にしつらえた仏壇は、大きな回り提灯や蓮の造花で飾ります。座敷へと続く縁側の戸は解放され、“おっさま”のお経の後は、隣村の皆様を迎え宴会が始まります。日が暮れると、近隣の村々ごとに、青竹や熊笹で化粧したリヤカーに大太鼓と小太鼓を積み、大きな番傘に赤い布を巻いた“かさんぼこ”という子供念仏の集団が、1台また1台とやってきて、初盆を弔う歌を唄います。僕も、小学校4年生から中学2年まで…この盆車を曳き、盆休みの間中、唄いまくっていました。
「そもそも遠州浜松のぅ~大念仏のはじまりはぁ~げんき三年猿の年~家康公と信玄とぉ~三方原にていくさしてぇ~」
まだ唄えます(笑)

宴会は終わりなく続きます。
「騒いでやってやぁ~故人が寂しがるらぁ~」

死んだ人を弔う気持ちは、五穀豊穣を願うお祭りや新年を祝う正月とは別に、子ども心にも強烈な印象を残します。
…が故ですか、お盆には必ず帰省してしまう。そんなところです。

松村とは新宿時代の雀友であり、趣味の映画の話をとことんまで出来る数少ない友でした。亡くなって3年が過ぎるうちに、忘れてしまっていた彼の事を、最近思い出します。進行性で悪性の癌は、思いのほか早く彼を蝕みました。僕が知ったのは、亡くなった後でした。
死を意識した松村は何を想ったのか今では知る由もありませんが…自分がこんな今だから思い出すのでしょう。

葬式での松村の奥さんの姿は…適当な形容が思いつきませんが…何というか…素敵でした。
まだ幼い子供らを脇に気遣い「松村の心は私たちの中にあります」
凛と言い放った姿は…ただ悲しむばかりの我々に勇気をくれた気がしました。
そんな松村の奥さんから本日、思いがけずメールを頂きました。ご本人の許しを得てご紹介します。
松村に縁のある方は、暫し、彼を思い出してあげてください。もうすぐお盆ですから…

◆ご無沙汰してます。茅ヶ崎の松村です。その節はお世話になりました。隆さんいなくなってもうすぐ3年半になります。
自分のことでいっぱいで、紋谷さんのこと、高原君から聞きくまで知りませんでした。すみませんお話になりっぱなしの不義理夫婦でホントすみません

BLOGみました。県立ににいらっしゃるんですねー。松村の診察で一度行ったことがあるんですよ。うちのは原始神経外胚用性腫瘍とかp-netとかいうやつで、県立も国立も難しかったみたいです。
頑張れてる紋谷さん、すごいです。ちょっぴり羨ましいです。隆さんの分も頑張ってください!

娘にも相談しました。パパがすごくお世話になった先輩が同じ病気で頑張ってること、ママはパパができなかった抗癌剤治療でパパの分を生きてほしいって。そしたら「そうだね、パパもそう思ってるね」だって。子供達の気持ち、お見舞いの気持ちに託しました。

BLOGで沢山の懐かしい顔に会えました。紋谷さんのBLOG、プチ同級会みたいですね。紋谷さんのお人柄ですよね。すごいです。

そういえば、隆さんって紋谷さんのお店、一度も伺ってないですよね。ホントすみません。(きっと向こうでバツが悪そうに頭に手をあててるかも)隆さんも応援してます。癌おとなしくさせちゃってくださいね。

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