紋谷のソコヂカラ
僕の飼い主と帰省 [旅/土地]
投稿日時:2010/08/17(火) 09:15
暑い 暑い …こんなことならプーヤンパパ(※)の家でクーラーのそばで寝ていたかった。
飼い主がお盆の帰省に帰ると言うので、付き合ってやったのだが、こんなに蒸し暑いとは… 参った。
飼い主の故郷は、静岡のなんちゃらという田舎の町だ。まあ…よくも と思うが、回りは茶畑と田んぼと川と山と …またまた茶畑しかない。
飼い主が言うには「年越しは帰らずとも、盆には帰れ 」と親に言われ続け、お盆は、田舎で過ごすことが当たり前になっちまったらしい。
とはいうものの、それほどのこともなく、東海道線から新幹線に乗り継いでも、東名高速を車で帰っても…たかだか3時間の距離である。ボクも小さい頃は、ミルキー(※)と一緒に車に乗って、飼い主の帰省に付き合った。
ここ、最近は飼い主の事情で、電車で帰ることばかりで、ボクやミルキーは、おいてけぼり。
久しぶりのドライブでもあります。ミルキーはプーヤン宅で涼んでいる。
…まあ、こうまで暑いと、そっちの方が、うらやましい。
都会と違いコンクリートの照り返しがないのが、田舎のよいところではあるものの、それでも。なんなんだこの蒸し暑さは。
着いた夜は、「お盆の行事」とやらを観に出かけた。…といっても飼い主の家の目と鼻の先…ボクは初めて観る
なんだなんだと待っていると
「いっちゃ よれよれ~」なんて掛け声をかけながら提灯の一段が近づいてくる。
飼い主が言うには「これは子供念仏…通称“かさんぼこ”って言うんだよ。村ごとに子供たちが、初盆の家を訪ねる行事なんだ」
なるほど、よく見れば、みんな子供である。
上から下まで真っ白で、麦わら帽子をかぶり…リヤカーに大太鼓と小太鼓を積んで囃しながら向かってくる。先頭には、大きな番傘に赤い布を巻きつけ…
ああ、これが“かさんぼこ”という奴やね。
「そもそも遠州浜松のお~ 大念仏の始まりわぁ~元亀三年申の年い~頃は 五月の下旬なりい~家康公と信玄とぉ~三方が原にて戦してぇ~…」
突然、飼い主が唄い始めた。
「覚えてるもんだろ。こういう歴史絵巻なんかの唄を覚えてな。初盆のお宅で一列に並んで唄うんだよ。唄の最後は、だいたい“往住安楽 南無阿弥陀”で、終わるんだよ。だから歴史絵巻といっても、死者への弔いの唄だね。」
確かに、一行は、松明の焚かれた家の縁側に勢ぞろいして、唄を歌い始めた。??…あれっ?また違う唄だ。
「亡くなった方が子供だったり親だったりしても違うしリクエストなんかもあるからね。十曲くらい覚えてるよ」
ふーん。 ん?今度は 大勢だぞ。しかも大人…みんな衣装着てるし、銅鑼まであるぞ。
「こっちは 大念仏。ほら、さっきの唄の歌詞にもあっただろ。これは天竜地方の伝統芸能で、わざわざ呼んできてもらうのさ」
へ~。ボクが死んだら飼い主はどうすんだろ。浄土なんとかとか宗教とか入ってないから。関係ないのかなぁ。なんか踊ってくれたらいいなあ。
翌日は、飼い主と2人で海へ。やったあ 海大好き…もうどんどん飛び込むぞ。
…あれ? 波高いぞ。台風の影響って、ひええ~
…もう ボールを うっ …投げ …ないで …塩水が口の中に …うっ …だから 投げないで投げると 走って…うっ しま…う
ボクの…悲しい…うっ…さが…もうへろへろ …みなさん聞いてください。
飼い主が海に連れてきたわけ…その魂胆はボクを洗濯しようってことなんです。日ごろ、洗わないから、こういう機会に。
ひどいでしょ。…でも、海大好きなボク。
涼しくなったのもつかの間、夜はまた蒸し蒸し、昼間の疲れもあって、ボクはもうへろへろです。
翌日は、飼い主の幼馴染の家にここにはボクと同じ黒いレトリーバーのメスがいます。
ボクが8歳で 彼女は4歳…人間の歳に直すと…うーん人間の歳に直すって意味ないよねいつも思うけどまあとにかく、ボクには子供すぎてパスですわ。
まとわりつくのが面倒くさい。飼い主は、なんだか幼馴染の子供の夏休みの宿題を見ている。
「日本の一番西の島は?…ふん 与那国島じゃん日本の一番南の島? …そんなの波照間に決まってるじゃん。…ん?違う 沖の鳥島…はあ?…ああ、無人島ありえね。
あれ?そうなると…南鳥島じゃないのか?えっ、そうか200海里の話ね。なるほど…中学生…わかりにくい~」
とかなんとかぶつぶつ言っているけど大丈夫かな。しばらくして幼馴染と通った小学校にみんなで行くことに。
途中、かぶと虫を採るらしい。まさに、夏休みっぽいね。
ぽいけど 暑い。ボクには辛い。かぶと虫も小学校もどうでもいい。
ちなみに、飼い主は「電動車(シニアカー)に乗っている。倉庫から埃まみれを引っ張り出してきた。
「おおっ!最高時速6Kmだぞ。いいねえ。快適 快適♪」
あんたはいいけどこっちは辛い。かくして大人2人(ひとりはシニアカー)子供3人と黒いラブ2頭の珍妙な行列が田舎を行進することに。
畑仕事のおばあちゃんとか近所のかあちゃんが、なんだか変な目で見ているぞ。
しかし、気にしない、この飼い主はそういうことは無頓着。
こんにちは~なんて言っている。
かぶと虫も無事に採れて、
帰るときボクのリードを外してくれたので、田んぼを越えてお散歩してみた。
水路があった。!もう我慢できないので飛び込んで泳いでしまった。
ああ、気持ちいい~こういうことは田舎ならでは、探しにきた飼い主が笑っていた。
最後の晩は 花火を観に出かけた。延々と続く田んぼの先の大きな川の縁で上げるらしい。これまた、へろへろになった。
「田舎の花火 下から見るか 上から見るか」
なんだかわけわかんないことを言っている飼い主。
飼い主のお母さんとその友達らしきおばさんも一緒でしたが、途中で別れてボクと飼い主の二人で観る。
「この田舎のしょぼさが ボクは好きだな。何十万発とかさ 何尺玉だとかさそういう大きさや数じゃないんだよね。都会のはさ。もう人がうざくてなにしに来たのかわかんなくなるからなあ。」
そういうものか。それでも、この町中の人が観ているらしく、けっこうな人出である。
「隣の市の花火は 全国的にもその規模で有名な花火大会だったんだけど、不況で去年から中止だと。小規模でも継続する、ちょっとづつでもボランチィアでも、頑張って毎年上げるそいういうことが大切なんだよな」
また、この飼い主はわかった風なひとりごち。地道にこつこつ、継続する…
が苦手なのはあんたじゃないか。
そして、今朝飼い主の渋滞は嫌いの一言で朝5時に自宅に戻ることになり、家に戻ってきました。
…ん?…こっちはこっちでまた暑いじゃないか!
なに!36℃!! ありえねえ。
海飛び込みたい
川泳ぎたい
はあ~ そんなボクの旅日記。
※「プーヤンパパ」:神奈川県随一の犬好きと飼い主が言うペットシッターさん。おまえら愛犬をどこの馬の骨には預けられねえ~とか、なんとか言っていつもお世話になっている。
※「ミルキー」:飼い主の初めての飼い犬。メスのシェルティー。もうおばあちゃんで、目も耳もあまり聴こえない。どうもボケもキテいるらしい。でも、飼い主が来るとわかるようで元気になる…とプーヤンさんが言っていた。そういうところが飼い主はたまらないらしく。たまに泣いている。
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