紋谷のソコヂカラ

這えば立つ…立てば歩く…歩けば喋り考える [戯れ言]

投稿日時:2009/05/05(火) 19:55

「はい。 ワタシは40歳です。
  妻は35歳…幼稚園に通う…ひとり娘のことで…心配になりまして、
  ご相談できればと…。 

3ヶ月ほど前に、娘が園でお漏らしをしまして、
それ以来、幼稚園に行きたくないと…ええ…
それはもう、大変に駄々をこねていまして。

もう、毎朝、泣き叫ぶんです。
だいじょうぶだからっていくら言って聞かせても、きかなくて。
えっ?…送り迎えですか?…それは妻が毎朝。
はい…共稼ぎです。妻の仕事ですか?
夜は近所のスナックに出ています。
ええ。帰りは遅いです。
 
朝は娘のお弁当を作って、…そうです。
車で5分くらいの距離です、妻が送っていきます。
帰りも妻が迎えにいきます。
その後は、となりに義理の母が住んでいるものですから、
預けて、そのまま仕事に。
はい。私が仕事を終えて、帰りに迎えに行きます。
 
食事は…義理の母の家で、ええ、そうです。毎日。
で、夜はワタシが寝かしつけてます。
なにが気に入らないのか、わからなくて。
…幼稚園の先生に聞いても、別に誰かにいじめられている
ということはないようで…はい
…連絡ノートですか、妻が書いています。
 
…そんな感じですので、たまに幼稚園をお休みするようになってしまって…。
そういう日は、クラスのお友達が、連絡ノートや給食を届けてくれるんですが、
顔も見せず…自分の部屋に閉じこもってしまうんです。
あと、すぐトイレに…はい…日に、何度も何度も
…これまではそういうことはなかったものですから…ええ
…どうしたらいいのか…皆目、見当が付かなくて…
はい…お願いします」
 
◆◆◆

逗子に住むM氏には、2人の男の子がいる。
ひとりでも、やんちゃなのだが、2人揃うと、
そのやんちゃ度合いは、2乗のパワーをもつ。
 
ただ、男兄弟とはそうしたものなのか…
何事にも“お構いなし”に突き進む弟に比べると、
少し年上のお兄ちゃんには、どこか思慮分別を感じる。
 
ひと晩のお世話になり、朝のこと。
お兄ちゃんはすでに小学校に出かけていて、M氏はまだお休み。
奥さんはお勝手に。
リビングには弟君ひとりである。
 
「おはよう」
「……」 
なんの反応もない。ただ、ジロリ…と見る。
 
パンとスープの脇にプレートがあり、
なにか黄色いぽろぽろとしたものを格闘している。
 
「何を食べているのかな?」 
見ると、ゆで卵の白身と黄身を分けて、その白身だけを食べている。
 
「黄身が美味しいのに…食べないの?」
「…ジロリ…」
 
奥さんが、僕の分も用意してくれて、弟君と差し向かいでの朝食となった。
無言のテーブル。
機嫌の悪い、おやじのようである。



突然「行くよ!」とキッチンに声をかけ、立ち上がる弟君。
「はい。はい。」と奥さんが応える。
予め、準備していた、ランドセルを手に取ると、
そのまま玄関へと向かう。
テーブルには、黄身の残骸が残されたままだ。
 
聞くと、歩いて10分ほどのところに、
迎えのバスが来て、それに乗ると言う。
面白そうなので、ついていくことにした。
 
奥さんと弟君が歩く後を、5メートルくらい空けて。
「ああ、この空き地に、もう○○が咲いたね」
「今日は、体操があるのよね 」 
「○○ちゃんはお風邪治ったのかなあ…?」
喋るのはほとんど奥さん。
 
弟君は、「うん」としか言わない。
坂を下り、住宅街を抜けると、バス通りがあり、迎えの場所に着いた。
そこには、バスを待つ、お母さんと子供達が20人くらい
すでに集まっていた。
 
どう考えても 場違いな自分のせいで、あらぬ詮議は申し訳ないと、
「主人の、会社の先輩です」という奥さんの紹介に併せて、
ご挨拶をしていると。
突然、弟君から声がかかった…
 
「僕が一番好きな お友達の○○君」 
とひとりの男の子を紹介する。僕を見て、初めて笑った。
どうやら、僕が着いてきたことは分かっていたらしい。
 
帰り道、奥さんに聞いた。
「いつも、あんな感じ?」
「今朝は、もんやさんがいたんで緊張していたんです」
と言う。そうか、朝、こんなおじさんがいて、
目の前に座ったら、ごはんも食べづらいし、
なんだかとことこ付いてきたら、そりゃあ…気になるわよな。
 
当たり前の些細なことながら、大人は気がつかない。
しかし、この奥さんは大物だと感じた。
見ていて気づいたのですが、いちいち些細なことを叱らない。
だいたいが鷹揚に、わが子を見守っている。
 
それでも、気づくべきところはちゃんと気がついている。
残された黄身が気になって仕方がない、
僕などは小物だと改めて感じた朝でした。
 
後日、兄弟に“ジェンガ”を送ると、お礼のお手紙が届いた。
お兄ちゃんは「ありがとう」のコメント(奥さん代筆)
弟君からは なにやら “のたくった”イラストに ひとこと…

 あおむし とある。
 
どうも、それが彼のお礼らしい。(笑)
 
材木座の兄弟も、相当にパワーがある。
お兄ちゃんは、クラスにひとりはいる、女子の人気NO1のタイプ。
利発そうな顔でスポーツマン。対する弟はセンスの塊。
その上、大人殺し。
 
例えるなら、新劇の役者のような…
艶かしさを併せ持ち、大人を篭絡する。
 
この奥さんの料理が、また素晴らしい。
うまいうまいはもちろんながら、なにより、センスがいい。
 
食べることに執着心のある母親に育てられると、
食べることへの執着心はひと一倍強くなる。
それがボクです。
 
また、食事のマナーもうるさく躾けられた。
食事の前に間食は許さない。
テレビ観ながらなど言語道断。
ご飯は残してもおかずは残すな。
自分の食べた食器は、自分で洗え。…云々。
 
材木座の兄弟は、回りを飛び回り、我々の食卓に来襲しては、
手づかみで、おかずをさらって行く。
 
大人の邪魔をしてはいけない。と、テレビみたい。と、遊びたい。と、
お腹すいた、がこんがらがった感じだ。
 
そんな、中でも、奥さんは絶妙に、
我々と子供達に、食べさせるタイミングを心得ている。
弟君が、自分の好きなおかずだけを、もう、好きなだけ食べても、
まあよしよし。
遠慮している、お兄ちゃんの分も、さっと用意して渡す。
 
どの料理も、栄養面の配慮が行き届いているから、
どう食べようと、体にうまく、収まるようになっている。
男どもが、どうこようとも 対応できる、プロの手際。

途中、走り回る弟君が、テーブルにぶつかり、飲み物が床にこぼれた。
 
「おい!!○○!!…うるさい!! 
   ……いい加減にしろ!……ごめんなさいは!」とパパの怒声が飛ぶ。
やっちまった弟君を、奥さんは叱らない。
もう、言うべきことはパパは言ったから。
 
さっと雑巾で床を拭き、弟君の顔を羽交い絞めにする。
それだけ。
 
飲み物をこぼしたのは、おにいちゃんのせいだ…
と言い訳をしていた弟君が、その優しい羽交い絞めで大人しくなる。
 
パパがいない時は、ママは違うのだろう。
怒りもするのだろう。 
 
北風も必要だが、太陽も必要。
そういうことを垣間見た。
 
◆◆◆
 
その、告白は、車のラジオでたまたま聞いた。 
ニッポン放送 テレフォン人生相談。
 僕はこう思った。 

「それは スナックで働き始めた奥さんに男ができたんだ。
   それで、夫婦仲がぎくしゃくして
   …そういうことを娘は感じ取って、
    …そうだよなあ…それしかない」…と。 
 
その男性の相談を受けて、幼児教育研究の大原敬子女史が応える。
 
「あなた方夫婦は、機能で子育てをしている。いい?
   …彼女は賢いわよ。幼稚園でお漏らししたことを聞いて、
   迎えに行ったのは奥さんよね?…そこに替えの下着は持っていった?
   忘れたでしょ。それがいけないの。
   彼女は、いけないことをした…恥ずかしい…
   ママは着替えを持ってきてくれなかった…
   ああ、ワタシのことはどうでもいいの? そう思ったの。
   休んだ子に物を届ける役目は、クラスでも出来るお友達になるわよね。
  自分の恥ずかしい失敗をその出来るお友達が来るたびに思い出すの彼女は。
 何をしてもそのことを思い出すの…
   だから頻繁にトイレに行くの。わかる?
   もう、失敗しちゃいけない。いけないって自分に言い聞かせているのよ。
 
    泣くことはいいこと。泣かないほうが怖いわよ。
    泣くには泣く理由があるの、彼女は
    ワタシノコトハ、ドウデモイイノ?って泣いているの。
 
    車で5分なら、明日から自転車か歩きで送りなさい。
    それで、少し早く出て、幼稚園に付いても、
    その回りをわざと1周するの…
    そこでね  “ああ…ママ○○ちゃんとお別れしたくないなあ~”
    って言ってあげるの。
 
     お迎えもそう…彼女が来たら、ひざをついてね。
     彼女の目線でね。思いっきり笑顔で抱きしめるの。
     手首をつかみなさい。そうして抱き寄せるの。
    そうすると、密着するでしょ。そういうことが大事。
 
     あと、連絡帳には、親の感想ではなくて、
     今日、娘がなにしたを書けばいいの。書けないのは見ていない証拠。
     いっしょにいる時間じゃないのよ。
     旦那さんやお母さんに聞けばいいの…それだけ。
 
     あと、お母さんところで食事させてるでしょ。
     何を食べているか知っている?ジュースとかお菓子ばかりあげてない?
     甘いものは辛抱がなくなるのよ。
     今は泣いているだけだけど、小学校3歳4歳で、
     このままだと、彼女キレルわよ。」
 
下世話な発想しかできない自分のレベルの低さに恥じ入り、
まるで、謎を解く名探偵のごとく、
立て板に水で叱咤する大原女史に感服。
 
「子供は、親とは別の人格ということを理解できないのは、あなたが子供だから」
という持論をお持ちだけに、手厳しいが、
同級生と先生のお尻を蹴飛ばし、逃げようとする子供を、
壁に押し付け、叱責した先生を…ただ体罰はけしからん!
…と訴えるような親のいる現代、
誰かのせいにするまえに、ぜひラジオでもつけてみてはと思う。
本気で思う。
 
僕の回りの、夫婦はみな、このへん
…子育てのツボ(愛のあり方とでもいうのか)
このあたりがが分かっている。 
特に奥さんが見事にわかっている。
 
…そういう奥さんを見つけた、
旦那がすごいということになるのか。うらやましい。


 
(注)相談者 大原女史 両コメントとも
ラジオでその場で聴いた限りのため、詳細…とくに言い回しや順番は
100%正確ではありませんが、80%は確実にこの通りです。
念のため。


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