紋谷のソコヂカラ

知らずに死ねるか VOL.5 [知らずに死ねるか!]

投稿日時:2008/09/16(火) 22:50

「ボールのない甲子園 と 知ら死ね少々…」

毎年、夏に注目している“甲子園”があります。
といっても、野球ではありません。全国高校文化部の熱き闘い。

ひとつは俳人の町、愛媛松山で開催される「俳句甲子園」
もうひとつは、北海道大雪山国立公園一帯で行われる「写真甲子園」です。

 簡単に説明すると、俳句甲子園(以下俳句)の方は、
地方予選を勝ち上がった5人1組が、与えられた兼題をテーマに、
俳諧の句合わせを行うというもので、
8月19日(俳句の日)に全国大会が行われます。
初めは愛媛県内の9つの高校で始まったものが、
今では全国27の都道府県で予選を行うまでの規模に膨れ上がりました。
一方の写真甲子園(以下写真)の方は、毎年7月開催、
全国8ブロックから選出された3人1組が2日間の本戦を戦い頂点を決めるというもの。
ともに、チームの単位は高校です。

「俳句や写真で…戦うって?」
勝敗の明らかなスポーツとは違い、
どちらとも戦いには不向きなのではと思われますが、
それがこの甲子園の面白さでもあります。
もちろん専門家や識者が審査員となり最終の優劣を決めるのですが、
たとえば、俳句の場合、句合わせに面白みがあります。

お互いが句を発表しあった後に、数分間の質疑応答タイムが設けられていて、
自句が「いかに素晴らしいか」
また、「相手の句がいかに不出来であるか」をディベートし合い、
これも勝敗を分ける重要な要素となるのです。
たとえば 今年の決勝。愛媛 愛光高校と東京開成の試合では、

 ◆ 髪洗う散文的な男です (愛光)
の句に対して、
「散文的というと、だらだらとしてという印象でしかない、
それを男と言い切ることに意味があるとは思えない。不明確ではないか」(開成)
「いやいや、そこを理解してもらわないと困る。
高校生が毎朝当たり前のように身だしなみを整える光景、
ふと顔をあげるとそこに間抜けな自分の顔が…そこを自虐的に…」(愛光)
などという感じであります。

また、

 ◆行間の明るき文や小鳥来る (開成)
の句に対しては、
「その本の面白さを、小鳥来るで表現している意図はわかるが、
明るいというニュアンスはあえて入れ込む必要があったのか?」(愛光)
「読んでいる筆者の想いがまず、明るいにあらわされている…
ここが重要なのです」(開成)

※このあたり僕も細かいやりとりは忘れましたが…
まあこんな感じということです。
念のため。

などと、どうでもいい人が聞いたら、
まったくどうでもいい議論が展開されるのですが、
高校生侮りがたし、プレゼンのうまい奴はものすごくうまくて、
「こいつは文学教授か!」と、思わず突っ込みたくなるような喋りを
朗々と謳いあげる輩もいて、なかなか見ごたえがあります。
今年の決勝は、対戦両校とも男子5人組でしたが、
もちろん女子5人組などもいらして、
そんな相手と対戦すると、ニキビ面の男子たちが相手を意識して、
しどろもどろに…
なんて光景は微笑ましい一興。

写真の方は、2日間とも、決められた時間内に、決められたフィールド
(といっても、東川・美瑛・富良野町一帯ですから、相当の広さ)を
カメラ片手に走り回り、ひとつの「組み写真」を仕上げるというものですが、
決勝では、壇上で自分たちの作品をスクリーンに映し、
その企画意図をプレゼンするわけです。
北海道の大自然だけではなく、そこに働く人たちの横顔やあるものすべてを対象に、
ひとつのテーマを決めて創作、
その上でのプレゼンは、初めて訪れた北海道についての素直な感想や、
感じたことを詩や手紙形式にして発表したり…またこれもさまざま。
NHKで毎年ドキュメントとして放送してくれますと、
3人がそれぞれにフィールドを駆け回り、
撮影に奮闘する有様や、その後、撮影した写真、
数百点から組み写真に仕上げるために絞り込んでゆく過程などが描かれていて、
その真剣さにひかれます。

今年の優勝は「新潟県立柏崎常盤高校」男女の混成チームでした。
プレゼンの様子は放送されませんでしたが、優勝を決めた組の写真はもちろん、
予選でのエントリー作品と本戦でのファースト作品いずれも、
チカラを感じさせる出来で、感心いたしました。
(ネットで見る事ができます:
ブログ用に1枚拝借、転載させていただきましたが、趣旨ご理解ご容赦を)



俳句、写真以外にも、ブラスバンドや合唱やボイパ、
書道やロボコンやダンス…といわゆる一般的な、
スポーツ競技ではないところでの高校生の戦いはいっぱいあります。
僕などはチームでなにかを目指した経験がないので、
これくらいの年の“あやうい人間関係”が生み出すパワーは、まぶしいくて、
うらやましくて、ついつい見入ってしまいます。 
別に将来がどのこうのではなく、みんなで何かを目指す…
そういうことを始めようとする子供に育ってくれれば、人生面白いなあ…と思います。
最近、幼稚園から高校生までの新しい友人が どんどん増えてゆくので(笑)、
そのお父さん、お母さんに向けて。


このまま終わるのもなんなんで、文化の秋賛歌…いま、お勧めの小説などを少々。

◆◆◆ 「羊の目」著:伊集院静 文言春秋社 ◆◆◆

「乳房」 「受け月」と過去に読ませていただき、
ああ…この人は現代作家の中では、いちばん文章がうまい方だなあ…
と感嘆致しました。
今回の「羊の目」も、まったく感嘆! 
どちらかといえば、男子向きの作品ですので、万人にどうか…
はございますが、まあ…面白い。
これを読むまでは、伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」
上半期NO1かなあ…などと思っておりましたが、逆転です。
僕などが評するのは恥ずかしいので、思うことを2つ。
「やはり才のある方に経験が積み重ねられると、
言葉ひとつ、状況描写ひとつに重みがあるなあ」ということ。
もうひとつは、「1年に何作も書かれている作家さんは、
どしても作品ごとにムラがあったり、
その作風が故、飽きてしまい、もしくは飽きないような“趣向”がまた、
作品そのものの質を落とすことにつながるので、
ほんとうに良い物を生み出すののは
“本人が書きたい時に書きたいテーマで”が一番!ということです。
※作品の内容を知りたい方はご検索を。


◆◆◆ 著:和田竜 「のぼうの城」小学館 / 「忍びの国」新潮社














両作品とも、キャラクターが半端ではなく立っています。
戦国ものはあまり読まないのですが、
文献を参照にした史実をベースに、その中味を解きほぐし、
人物設定をして、物語を構成する術は、相当な手練れと
お見受けつかまつりました。
まるで映画を観ているような感覚になります。
エンターテイメントとして大人が楽しみたい作風ですから、
じゃんじゃん発表して欲しいです。ついてゆきます。
※こちらも内容は検索で…

ただ、書評での判断は無駄ですね。
最後まで読まないと、分からないと思います。
この2作品の素晴らしさは。
…でも基本、ジェットコースター系ですから、
読み始めたら早いですよラストまでが。
史実をベースにしていますから、時代考証のところに躓いても、
我慢してください。
そのうち一挙にくだり始めますから。

コメント


最後の2冊とても装丁がかっこよいですね。となりのT田E美さんに訪ねたところ彼女も読んでみたい本だと言ってました。彼女が買ったら貸してもらおう思います。

Posted by いとうかずみ at 2008/10/01 01:14:00+09 PASS:
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